地獄のカーバトル 第3話 その速さ、圧倒的
 S谷学校付近 ギョワアァァァッ!! 「楽勝! 余裕でついていける!」  インテRの後ろを、漆黒のBNR32が追走している。  ボオオォォッ!! ガァァッ! 「どうしたどうした! その程度かい!?」  コーナーというコーナー、そしてストレートというストレートで、シンジの駆るBNR 32は、インテRを煽りまくる。  パッパッパッ シンジはインテRにパッシングし、プレッシャーをかける。 「おそいよインテ!」  車のポテンシャルが違いすぎる。  ギョォォワァァァ 「もうこれ以上は無駄のようだね、一気にケリをつけるよ!」  いい加減、一方的なほどの速さの違いに、シンジも飽きたのだろう。 抜きにでる。  ポォォォァァァァァ 「ここからのストレートで、一気にいくよ!」  距離にしてみれば短い直線だが、600馬力オーバーの実力をもってすれば、容易く抜 くことができる。  グイッ! 「グゥッ!」  アクセルを踏み込む。  パアアァァァ プシィィィ 「余裕!」  フオォォォン・・・ アクセル全開から、一瞬でインテR抜きさってしまったシンジのBNR32。 「・・・やはり、この車にとってインテRは敵じゃないね」  BNR32のその実力の高さに惚れ直すと同時に、ライバルの遅さに少し溜め息をつく シンジ。 「・・・この前のエボも、まるで相手にならないだろうし」  もはや、ここにはシンジのライバルとなるような敵はいない。  ボオォォォォ・・・・・ クーリング走行をしているシンジ。 「・・・ま、そろそろステージを変える必要があるか・・・」  ボオォォッ 「ん?」  その時、背後から、一台の車が。  パシパシパシッ  しかも、パッシングしてくる。 「・・・ブルーの、FD3S・・・、しかも、ゴールドメッキのホイール」  どこかで見たことがある・・・。 「あれは確か・・・」  確か、以前、自宅から近くの峠を、TAKA氏のFDの助手席に乗ってた時・・・。 「下りで、TAKA氏のFDに追いついてきた車」  でもその峠、道が1車線しかなく、すれ違うのも難しいような道。 「そのブルーのFD、かなり飛ばしてきた様子だった。今までなにもいなかったのに、次 にバックミラーを見てみたら、ピタリと張り付いていた」  その時はバトルにはならなかった・・・。 「・・・だったら、今、ケリを付けてやるさ、この新しいBNR32で!」  チッカ、チッカ  ハザードを点滅させる。 「・・・いくよ、32Rっ」  パッ ボオオオオォォォォーーーーーーーッ ハザードを消すと同時に、アクセル踏みっぱ。 「はたしてこの加速についてこれるか!?」  ビイイイイィィィーーーーーーンンッ  そのFDも、吸排気系くらいはいじってあるのだろう、そこそこの加速をしていた。 「へえっ、さすがにインテより加速はいいか」  だが、その程度の加速でフルチューンド32Rに勝てるハズはない。 「この高速区間で!」  ギョォワァァァァっ  キュキュキュキュ 「どうだ!」  高速コーナーの連続する区間は、足の良さと、ロールケージで強化されたボディ剛性の 32Rと、元々の高いコーナーリング性能を誇るFD3Sにとって、得意分野。 「やるねぇ、ついてくるか」  とはいうものの、先ほどよりは明らかに差はついている。 「じゃ、例のシステムで、コーナー立ち上がりで引き離すかな」  そういうと、シンジは、とある謎のスイッチをONにした。 「タイミングはあってるハズだから・・・」  なにやらブツブツ言っている。 「さて、このコーナーで!」  そう言うと、フルブレーキングで減速すると同時に、ヒール&トゥで、ギヤを落す。  パンパンッ!! ボボッ それと同時に、マフラー口から連続して炎を吹く。 「ひょぉっ! やっぱこの音は気持ちいいねぇ!」  いわゆる、ミスファイアリングシステムである。  ポオオオォォォォ......... ハーフスロットル状態の時も、 「やっぱアクセル踏んだ瞬間のツキがいいね!」  ビイィィィィンン FDも、32Rの6ポット化されたブレーキ性能に、軽さで食い下がってきた。 「ここいらでバトルも終わりにしよう」  コーナー出口が見えてきた。 「・・・・バイバイ、FD]  次の瞬間、立ち上がりでフルスロットル! ギュオオオォォォ 多少リヤが出るが、そこはさすがアテーサET-S、車体を前へ前へと加速させてゆく。  ギャアアアァァァ 「・・・このバトル、勝ったね」  シンジのバックミラーに映ったのは、オーバーステアで大カウンターを当てているFD の姿だった。  フオォォォォォーーーーーン 次の瞬間、32RとFDとの差は、致命的なほど開いていた。 「勝った」  シンジは、そう一言だけ呟くと、32Rのアクセルを緩めた。 パシュッ! ブローオフの音が、勝利の合図かのごとく、鳴り響く。 「・・・あのFDのドライバー、決してヘタじゃない」  あのピーキーなFDのオーバーステアを修正できるだけでも、たいしたものだ。 「・・・でも、車の性能差がありすぎたようだね」  そう、確かに峠はサーキットとは違い、ドライバーの技量が物をいう。だが、やはり車 の性能がでるのは、どのステージでも同じこと。 「・・・さて、帰ろうか、32R」  ボッ! 32Rは、今一度アフターファイヤーを吹いたのだった。  第4話へ続く。
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