地獄のカーバトル 第5話 強敵、そして敗北
「ふわぁぁ〜〜」  いきなり、でっかいあくびをしてるのは、シンジである。 「けっこー暇なんだよねぇ・・・」  だったら走りにいけよ、とかいうツッコミなし。 「今月、かなり走りまわったせいもあって、ほとんど金ないんだよなぁ」  貧乏だと辛い・・・。 「フルチューンだから尚の事燃費悪いし・・・」  そりゃしかたないだろ。 「アスカさんにでもメール送ろうかな」  ちゃっかりメアドまで聞き出してたりする。 「でも、やっぱやめた」  なんだそりゃ。 「走りに行くとしよう」  毎度お決まりのパターン っていうか金無かったんじゃないのか。 「貯金下ろそうっと」  そういうことか。 「そうと決まれば、レッツらゴーっ」  いいのか、そんなんで。  銀行寄った後 ボオォォォ・・・ 備○大橋を渡ってる最中のシンジ。 「今日は肩脊を攻めてみよう」  肩脊は、道幅が途中まではせまく、普段は車もそこそこ通る。 「ま、多分、一般車に詰まると思うけど」  だが、途中からは広くなり、一般車がいなければ、そこそこ楽しめる道である。  チッカチッカ ウインカーを出して、信号で右折。 「さて、いこうか」  そこからものの50mほどいけば、肩脊の道だ。 「前方、オールクリアー」  珍しく、一般車もいない。 「GO!!!」  ポオォォォーーーーッ!! アクセルを踏み込む。 「いえぇっ!」  ゴワァァァァーーーッ しばらくは、直線が続く。 「んっ!?」  が、いきなり目の前に、ゆっくり走るNSXが。 「珍しいな、こんなとこをNSXが走るなんて」  しかも、オールペンのGTマシンのカラーだ。 「よくいるんだよね、格好だけのNSXって」  まぁマフラーくらいは換えてるか。 「軽く煽ってみるか」  パパパッ パッシング。 「やる気あるかい?」  フォォッ、フオオォォッ シフトダウンするNSX。 「よし、いくか!」  パアァァァァーっ!!  アクセルを再び踏み込む。  パンパパンッ!! 「へぇっ!」  NSXのマフラーからは、アフターファイヤーが。 「かなりシビアなセッティングじゃないと、なかなか出るものじゃないけどね!」  フオォォォーーーーンっ! 「それにこの音!」  普通のNSXの音じゃない。  ギャァァァァッ! 2台はテクニカル区間に突入。 ポオォッ、フォォォォッ・・・ 「なんだっ!?」  なんと、NSXはノーブレーキで突っ込んでいく。 「バカが! いくらなんでもそのスピードじゃ無理だ!」  シュンッ! が、 「そんな!?」  NSXは、何事もなかったかのようにクリア。 「クッ!」  フォオオォォォッ! ポオォォォーーーーッ!!  シフトアップする際、全くと言っていいほど、ロスがない。 「アクセルすら離してないような・・・」  フォォポォォォッ 「もしかして、シーケンシャルか!?」  そのことに気付いたときには、2台の差がかなり広がっていた。  フィィィイィィーーーン シンジも、タービンの金属音を響かせながら、攻める。 「トルクでいけぇっ」  グオオォォ・・・・ 登りの区間で、やや差が縮まる。 「ここからは高速区間の連続だ!」  パシュッ! ギョワァァァァッ!! シャリシャリシャリ・・・ NSXは、ガードレールにフェンダーを微妙に擦るまでインを寄せる。 「なんて奴だ!?」  シンジでさえ、そこまでいこうとは思わない。  シュゴオォォォ・・・ 「くっそぉっ、離されてたまるかぁ!」  ここでついにシンジがハイブーストを掛けた。 「いけぇっ、ブースト1.8キロ、800馬力だ!」  フォオオオンッ!! キュウギョギョォ・・・ ホイールスピンをして、猛加速するBNR。  グオォォォ・・・ NSXが、見る見る目の前に近づいてくる。 「どうだ!」  フォオオォォォーーーンッ! ボオオォォーーーーンッ!!  ついにテールトゥノーズ! 「ブレーキング勝負!」  タイトなコーナーに突っ込むため、レイトブレーキング! ギャァッ、ギャァッ ブレーキロックするギリギリの人間ABSで詰める。 「これでどうだ。・・・・!?」  シンジがブレーキペダルをリリース(離す)頃には、既にNSXはアクセルを入れて、 加速体勢になっていた。 「そんなっ!?」  なんとNSXは、シンジのBNR32よりもより奥に突っ込んで、それでいてBNRよ りも早く加速体勢に入っていたのだ。  フォオオオォォッ、ポオォォォーーーッ!  NSXとBNRとの差は、約50m 「・・・ダメだ」  パシュッ シンジはアクセルを抜く。 「勝てっこないよ・・・、あんなNSXに」  実力をまざまざと見せ付けられた。 「惨敗だね・・・」  はぁっ 溜め息をついた。 「腕もさることながら、車が凄すぎる・・・」  ブレーキで詰められない。 「一体、あのNSXはなんなんだ」  このBNR32に乗り換えてから、初の敗北だった。  とある豪邸。 フォォォッ・・・ あのNSXが、バックして車庫に入れていた。  ガチャッ ドアを開けて、一人の男が出てくる。 「・・・・・・・」  そして、そのNSXを見つめる。 「どうだ? GT−NSX・ロードバージョンの調子は?」 「悪くはない。が、まだ煮詰めが必要だ」  違う男が話しかける。 「・・・さっき、なかなか速いGT−Rに逢った」 「そうか」 「つい本気になってな、フェンダーを少し擦っちまった」 「オマエが本気になるとはな」  フゥッ タバコを吸う。 「トモアキ、これから煮詰めていくぜ」 「OK」 「なんせ、本物のGTカーをベースに、公道を走れるようにデチューンしたマシンだが、 性能そのものはレースカーのままだからな」 「感謝するぜ、オヤジ」  GT−NSXと、プロドライバー、橘トモアキ。強敵の登場である。  第6話に続く
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