春に咲く花
「春だなぁ・・・」  自分の部屋で、窓から外を眺めている少年、シンジ。 「桜・・・か。ちょっと前までは考えられなかったよな、春が来る、なんて」  サードインパクト以降、セカンドインパクトでずれていた地軸が元に戻り、四季が戻っ てきた。 「道の傍にも桜、か」  窓から見える、道路の脇にも桜の木があり、そこから春満開とも言うべき、桜の花が一 面に広がっていた。 「なぁ〜に黄昏てんのよ」  そんな様子を、開けっ放しにされたシンジの部屋の入り口から見ていたアスカ。 「アスカも見てごらんよ、桜って綺麗だよねぇ」 「ハン! いくら桜と言えど、このアスカ様の美貌には勝てないのよ!」  相変わらずの自意識過剰。 「そう言った意味だけでの綺麗でもないって」 「綺麗に他にどんな意味があるっていうのよ?」 「そうだねぇ・・・あえて言うなら、そのいさぎよさかな」 「どう言う意味?」 「桜ってさ、散る時が来たら一気にパーッて散るだろ? そのいさぎよさが、人々の心を 掴み、綺麗だなぁって感じさせるんだと思う」 「それならアタシだって!」 「アスカの場合、いさぎよくないんじゃない?」 「どう言う意味よ!!」 「ま、簡単に言うと、諦めが悪いって言うか、」 「悪かったわね!」  もうプンスカしてる。 「誰もそれが悪いなんて言ってないさ。良い言い方をすれば、どんな時でも諦めない強い 心ってことさ」 「・・・アタシは、強くなんてないわよ」 「どうして?」 「・・・使徒との戦い、そしてエヴァシリーズとの戦いで分かったのよ」 「なにが?」 「本当はアタシって誰よりも弱いんだってことが。本当は誰かにすがって生きていきたい んだってことが」 「・・・・そっか」  シンジはアスカに向けていた視線を、再びサクラの木に移す。 「・・・僕は、人間って誰だって弱いと思うし、誰かにすがりたいって思うのも、ごく普 通だと思う」 「・・・アタシは、それよりもさらに弱いのよ」 「本当に強い人間なんていないよ、誰しもがその弱い部分を隠して生きている」 「・・・アタシの場合はなんだと思う?」 「・・・プライド、かな?」 「・・・そうかもしれないわね」  アスカもシンジの傍に行き、窓の外を眺める。 「桜っていうのは、咲いている時よりも、散る時の方が神秘的に感じると思わない? 「・・・確かにそうね」 「いわゆる桜吹雪ってやつだけど、神秘的とも取れれば、幻想的とも取れるね」 「・・・なにが言いたいの?」 「ん? 別に言いたいことなんてないよ。ただ思い浮かんだから言ってるだけ」 「なにそれ」 「なんだろうね」  二人は顔を見合わせる。 フフッ  お互い微笑んだ。 「・・・ただね、アスカと桜って、似てる面を持ってると思ったんだ」 「どんなところが?」 「桜ってさ、ちょっとしたことでもすぐに散ってしまうだろ? けど、その翌年にはまた 綺麗な花を咲かせている」 「って言うと?」 「散ってもまた復活する、そんなところが似てると思う」 「別に散っても復活するのは桜だけでもないんじゃないの?」 「いつも常に綺麗でいる、それでいて、いつどんな行動を起こすのかさっぱり分からない ってとことかも」 「あ、やっとアタシのこと綺麗って認めたわね?」 「ずっと前から認めてるよ。アスカは綺麗だってことくらい」 「シンジも言うようになったわね」 「そうかな?」 「そうよ」 「そうかもしれないね」  シンジは考えるようにして言った。 「ところで、なんで桜が春に咲くか知ってる?」 「さあ?」 「僕が思うに、きっと桜はその姿を大勢の人に見てもらいたいからだと思う」 「それと春がどう言う関係があるっての?」 「ほら、夏って暑くて花見なんてする気分にならないし、秋も肌寒い、冬も寒くて家の中 で暖房効かせてゴロゴロしてる」 「あ、そうか。人が心地よく外に出るって言ったら春だものね」 「そう言うこと」 「春の陽気な中で花見って言うのが、確かに一番落ち着くわね」 「桜は、人が春に花を見ることを知っているんだよ、きっとね」 「ふ〜ん? そんなもんなのかしら」 「あくまで僕の勝手な思い込みだよ」 「そう言うことにしとくわ」 「って言うかそうでしかないんだけどね、人それぞれ考え方違うし」 「ま、そうね」  そして二人は、お互いがお互いを意識しながら、窓の外の桜を見ていた。 fin
あとがき はい、何が書きたいのか自分でもよく分かりません。 なんとなく春物が書きたくなったので書いてみました。 SSでもなければ詩でもない中途半端なものです。 個人的に急に書きたくなったので、内容にこだわってませんです。
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