何事も物事とは突然に起きることが多いですよね?
今日、みんなの人気者碇シンジ君もそんな出来事に遭遇したのです。



えいぷりーるふーる


By:PON





ある日、碇家のポストに一枚の手紙が届きました。
「碇 シンジ様」

その水色の手紙にはただシンジ君の名前のみが記入されていて、あて先の住所も差出人も何も書いていません。

「あらあら、シンジに手紙ね。もしかしてラブレターかしら?」

その手紙を最初に見つけたのは母親のユイさんでした。

「シンジに届けなきゃね。楽しみだわ」

何が楽しみなんでしょう?軽やかに自宅に戻ります。
玄関のドアを開け、靴を脱ぎそのままユイさんはリビングに向かいます。


その時あくびをしながらシンジ君が起きて部屋から出てきたところでした。

「あ、母さんおは・・・「シンジ、あなたに手紙が来てるわよ」

シンジ君の挨拶もまどろっこしいのか早速ユイさんはシンジ君に話し掛けました。

「え?母さん・・・手紙?」
まだ多少寝ぼけているのか、いまいちシンジ君は理解できていないようです。

「そうよ、あなたに手紙が届いてるのよ」

「ありがとう」
頭をポリポリ書きながら手紙を受け取るシンジ君。何か不思議そうです。

「どうしたのシンジ?もしかしてラブレターかしら?」
ユイさんは楽しそうに話し掛けます。

「そんなんじゃないと思うよ」
そんなはずはないとシンジ君は否定しながら手紙の封を開けます。

中にはかわいらしいピンクの便箋が1枚だけ入っていました。
いかにも女の子が使いそうな便箋です。

「なんだろう?」
不思議そうにシンジ君は手紙を開きます。

と、その時シンジ君はある視線を感じました。
それはユイさんの興味深そうな視線でした。

「な、何だよ?母さん?」
何か恥ずかしそうにシンジ君はユイさんに話し掛けます。
でも手紙はしっかりと背中に回してユイさんからは見えません。

「シンジがどんな手紙を貰ったのかと思ってね」
ユイさんはニコニコしながらシンジ君に答えます。

「か、母さんには関係ないだろ?」
なんだか恥ずかしそうなシンジ君です。

「あら?大事な息子にラブレターが来たんですもの。興味あるのは母として当然よ」
ただの興味かどうか分かりませんが、ユイさんはシンジ君に諭すように話します。

「いいよ。自分の部屋で見るから」
そう言うとシンジ君は自分の部屋に戻ってしまいました。

「シンジも年頃ですからね」
誰に話し掛けるでもなく、ユイさんはつぶやきました。

「お茶でも飲もうかしら?」
そう言うとユイさんはお湯を沸かし始めました。

さて、所変わってシンジ君の部屋ではというと
「まったく、母さんもすぐ人の手紙見ようとするんだよな」

あらあら、いつもの事だったようです。

「で、何なんだろう?」
再びシンジ君は手紙を開き始めます。

その手紙には明らかに女の子とはっきり分かるかわいらしい文字でこう書いてありました。

「碇センパイ初めまして。私は碇センパイの存在を知ってから、いつか碇センパイと話をしたいと思っていました。もし迷惑でなければ4月1日の午後1時に会ってもらえませんか?駅前で待ってますので来てもらえたら嬉しいです。」

名前などは全く書いてませんでしたが、明らかにラブレターです。
しかも4月1日といえば今日です。時間はまだまだ余裕があります。

「4月1日か・・・って今日だ。えっと・・・時間はまだまだ余裕がありそうだ」

あらあら、そのまんまですね。

「じゃあとりあえず朝ご飯でも食べようかな?」
と言うと手紙をもとの通りにしまい、部屋を出てリビングに向かいます。

「母さん、朝ご飯あるの?」

「あらシンジ。ラブレターは読み終わったの?」

「そんなんじゃないよ」

「ふふっ。すぐ出来るわよ」
さすがにユイさんもそれ以上は詮索する気は無いようです。

すぐにシンジ君の前にトーストとスクランブルエッグが出てきました。

「あ、母さん。もうちょっとしたら出かけるからね」
パンをくわえながらユイさんに話し掛けます。

「アスカちゃんと?」
ここでユイさんは当然のようにお隣のアスカちゃんの名前を挙げました。

「いや、一人で出かけるけど」
首を振りながらシンジ君は答えます。

「やっぱりラブレターだったのね」
ユイさんはお茶を飲みながら笑顔で話し掛けます。

「ち、違うってば」
必死に弁解するシンジ君。もう誰の目にもバレバレです。

「ハイハイ。出かけるならお小遣い必要でしょ?今渡すからね」

「え?お小遣いくれるの?」
なんと臨時にお小遣いが出ると知って、からかわれたことはすっかり飛んでしまいました。

「特別よ。その分ゲンドウさんのお小遣い減らすだけだから大丈夫よ」
さらっと凄いことを平気で言うユイさんです。

その頃
「ヘックション!」
とても大きなくしゃみをする人がいました。

「なんだ碇?風邪でも引いたのか?」

「いえ、冬月先生。急にくしゃみが出てしまいまして」

「誰かに噂でもされてるんじゃないのか?」

「私の事を噂する者など居ませんよ」
しっかりと噂されていた父のゲンドウさんでした。

(・・・それもそうか。いや、もしかしたらユイ君が噂してるのかも知れん。多分碇のやつにとっては良くない事だろうが)
冬月先生はしっかりとくしゃみの原因を考えていたのでした。

再び碇家のリビングでは
「え?母さん?こんなに貰っていいの?」
シンジ君の手にはしっかりと1万円札があったのです。

「そのかわりお茶代くらい出してあげなさいよ。あと何かプレゼントあげるのもいいんじゃないかしら」
ユイさんは相手の女の子に何かしてあげるようにと多めのお小遣いを渡したのでした。

「だから違うよって何度も言ってるのに・・・」
お小遣いは貰いましたがどこか不満そうなシンジ君です。

「もうそろそろ支度しないといけないんじゃなくて?」
ユイさんは時計をチラッと見てシンジ君に諭します。

「あっ!そうだね」
と言うとまたもや部屋に戻ったシンジ君です。

「まったく、シンジったら頑固だわね。誰に似たのかしら?」
なんて事を考えながらお茶を飲むユイさんです。

パタン

ドアが開き、着替えたシンジ君が出てきました。
「あらあら、シンジ、寝癖直しなさいな」

女の子と会うということでユイさんもシンジ君の姿を気にしているようです。

「寝癖出てる?見てくる」
洗面所に向かうシンジ君です。

戻って来ると
「どう?母さん?大丈夫?」

「良し。直ってるわよ。気をつけて行ってらっしゃいね」

「うん。じゃあ行ってくるね」

「いってらっしゃい」

と言うとシンジ君は出て行きました。

さて、シンジ君は駅前に着いたみたいです。

キョロキョロと周りを見渡してます。

するとどこからか走ってくる人が居ます。

「ああ、シンジ君。会いたかったよ」
そのままシンジ君を抱きしめてしまいました。

「か、カヲル君?!」
シンジ君は意外な友人の登場に驚いています。

そう、シンジ君の友人カヲル君です。

「約束もしてないのに会えるなんてやはりボクとシンジ君は結ばれているんだね」

「な、何を言ってるんだよカヲル君?!」
なんとかカヲル君から離れたいシンジ君ですが、しっかりとカヲル君に抱きしめられている為離れられないのです。

その時

スパーン!

「いいかげんにしなさい!」
カヲル君の頭を引っ叩いたのはやはりクラスメートのレイちゃんです。
何故かハリセンを手にしていましたが。

「あ、綾波・・・なんかカヲル君瞳孔が開いてるけど大丈夫なの?」

そう、レイちゃんの手首のスナップを思いっきり効かせたハリセンはカヲル君にクリティカルヒットしたのでした。

「え?カヲル・・・きっと大丈夫だよ」
なんかレイちゃんの間が気になりますがシンジ君とレイちゃんは話を進めます。

「ところで2人でどうしたの?」
シンジ君が尋ねます。

「ん〜ちょっとカヲルと買い物に来たんだけど、なんか壱中の後輩の女の子からシンちゃんにって預かったものが有って待ってたんだ」

「え?僕にって?」

「そうだよ。なんかショートカットの可愛い娘だったよ。シンちゃんもアスカが居るのにいいのかな〜?」
シンジ君をからかうレイちゃんです。

「そ、そんなんじゃないよ綾波」
何故か照れてしまうシンジ君です。

「はい。預かり物。じゃああたしたちは行くね」

「あ、ありがとう綾波」
シンジ君は2人に手を振って別れました。

あれ?カヲル君は・・・ちゃんとレイちゃんと手を繋いで・・・いや、引きずられて・・・去っていきました。
レイちゃん恐るべし。

さて、残されたシンジ君ですがレイちゃんから渡されたのはやっぱり手紙でした。
同じ水色の封筒です。

封を開けてみるとやはりピンク色の便箋でした。

「碇センパイへ。やっぱり人が多いところは恥ずかしいので公園に来てもらえますか?待ってます」

この一文だけの手紙です。

「なんだろう?面倒だな」
と言いながらも優しいシンジ君はその通りに従います。優柔不断とも言うんでしょうが。
その辺は相変わらずですね。

さて、公園に到着したシンジ君、相手が分からないのでとりあえず公園を歩きます。

「誰なんだろうな?」
心当たりの無いシンジ君。相手が誰だか分かりません。
でも心当たりが無いのはシンジ君だけだったのです。

実は学校でシンジ君の下駄箱に手紙が入っている事が多いのですが、アスカちゃんが全部回収していたのです。
正確に言うとアスカちゃんに命令されたケンスケ君が回収しているのですが。

ちなみに今日はケンスケ君の登場の予定は全く有りません。
あと、トウジ君とヒカリちゃんは2人でお出かけしているみたいです。

さて今日のメインのシンジ君はというと、公園の端っこの方を歩いていました。

「どこにいるんだろう?」

相手も分からなければ場所も分からないシンジ君。段々と疲れてきたようです。

その時、突然声を掛けられました。
「碇センパイ」

「えっ、あ、はい」
後ろを振り向こうとするシンジ君だったのですが

「そのままでいて下さい」
振り向くのを止められてしまいました。

「あ、うん」
ちょっと困った様子のシンジ君です。

「センパイ。実はアタシ、前から・・・」

「ちょ、ちょっと待って」
突然シンジ君が語気を強めて言いました。

「確かに手紙を貰ったことは嬉しかったんだけど・・・」

「アタシも来てもらえてとても嬉しかったです」

「でも、ぼ、僕には大事な人がいるんだ。凄く悪いとは思ったんだけど、ちゃんと会って断ろうかと思って」

「そ、その人って誰なんですか・・・」

「そ、その人は・・・」

「アタシでしょ?バカシンジ」

「えっ?」
あわてて振り向くシンジ君です。

「や〜いひっかかった!」
そこには自身満々の表情を浮かべたアスカちゃんが仁王立ちしていました。

「あ、アスカぁ!」
とても驚いた様子のシンジ君です。

「まったく、単純なんだからね」
からかう様にアスカちゃんは言い放ちます。

「なんでアスカがここにいるのさ?!」

「ちょっとからかってみようかと思ってね」
天使のような悪魔の微笑みで笑いかけます。

「酷いよアスカ。からかうなんて」
すねた様子のシンジ君。ちょっと不機嫌そうです。

「いいじゃないのシンジ。ちゃんと断るつもりだったんでしょ?」

「だいたい僕が来なかったらどうするんだよ!」

「ちゃんと来たんだからいいじゃない」

「だからって・・・」

「今日は何日だったっけ?」

「今日は4月1日だろう・・・」

「今日は何の日だか分からないの?」

「今日はって・・・あっ!」

「エイプリールフールよ」

「アスカは僕の事を騙したんだ・・・」

「引っかかる方が悪いのよ。それよりユイおば様からお小遣いもらってるんでしょ?遊びに行くわよ」

「なんで知ってるんだよアスカ!」

「教えてもらったの!さあ行くわよバカシンジ!」

「待ってよアスカ!」
アスカちゃんはシンジ君の手を取って強引に連れて行ってしまいました。

エイプリールフールということで見事に騙されたシンジ君でした。
まぁエイプリールフールという事を忘れていたシンジ君が悪いということで一件落着ですかね。

まぁ二人の邪魔をするのも悪いのでこの辺で今日の話は終わりにしたいと思います。




どうもPONです。
makkiyさんのサイトに初投稿させて頂きます。
エイプリールフールからはかなり日付が過ぎてしまいましたがご愛嬌って事で許してくださいませ。
ではでは



PONさんより投稿小説を頂きました〜。
エイプリルフールですか。シンジもアスカに騙されるのなら本望かもしれませんね〜。
けれども、なんだかんだ言っても、やはりこの二人は仲が良いですねぇ。
やっぱり『夫婦喧嘩』ですね!(^-^)
何はともあれ、ご投稿ありがとうございました、PONさん。

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