全ては終わった・・・。
  
「うっ・・・くっ・・・」

 一人の少年の意志により・・・。
  
「・・・キモチワルイ・・・」

 だがしかしそれは、
  
  全ての始まりでもあった。











全ての終局、全ての始まり
 赤い海がある・・・。 「・・・・・・・・・」  そして砂浜がある。 そこに一人の少年と一人の少女がいた。 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・」  少年は座り、うつむいていた。  少女は、あおむけで寝て、目を開いたままなにをするわけでもなく。 「・・・僕は・・・僕はこれからどうすれば・・・」 「・・・・・・・・・」  少年は呟いた、だが少女は答えない。 「ねぇアスカ・・・助けてよ・・・、僕を助けてよ・・・」 「・・・知らないわよ・・・アタシには存在する意味なんて・・・ないんだから・・・」  自分の全てを拒絶され、自分の全てを拒絶してしまった少女。 「僕にはアスカしかいないんだよ・・・・助けてよ・・・・」 「・・・・・・・・」  再び少女は沈黙した。 「ねぇ・・・ねぇ・・・アスカ・・・」  少年は、少女の肩をゆさぶる。 「・・・キモチワルイ・・・アタシに・・・・触らないで・・・・」 「!!!」  その少女の一言は、少年に衝撃を与えるのに十分だった。 「・・・どうしろって・・・いうんだよ・・・」  少女の肩をゆさぶるのを止め、また一人俯いた少年。 「・・・もう・・・どうすることも・・・できないんだ・・・」  独り呟く少年。 「・・・・・・・・・・・・」  少女もまた、なにも口を開こうとはしなかった。 「・・・僕は望んだんだ・・・僕は自分が嫌い・・・周りも嫌い・・・、だから皆死んで しまえばいい・・・そう望んだ・・・」  少年は、少女が聞いているかどうかなど関係ないように、独り話し始める。 「・・・でも、それがまさか・・・本当になるだなんて思わなかった・・・」  人(たにん)を拒絶した少年と少女。 「・・・アタシには・・・もう・・・なにもいらない・・・なにも求めない・・・。人を 信じたって・・・、裏切られるだけだもの・・・」  人間不信に陥った二人。 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」  今度は二人とも沈黙した。 「・・・どうせなら・・・このまま死んだほうが・・いいのかもしれない・・・、いや、 いっそ生まれなかったほうが・・・よかったのかもしれない・・・」  口を閉ざしては再び開き。それの繰り返し。 「・・・そう・・・アンタさえいなければ・・・アタシが傷つくことはなかった・・・」  少年は、少女が心を開きかけた相手だけに、尚更傷ついた。 「・・・アンタは・・・アタシを助けてくれなかった・・・」  少女の口調には、全く感情はこもっていなかった。 「・・・アスカも・・・僕を助けてくれなかった・・・」  お互いが、お互いを求めた。  だがまた、お互いがお互いを拒絶した。 それが結果として、お互いがお互いを傷つけた。  数日たって。 「僕は・・・、僕はなぜ生きてるんだ・・・」  全てが無くなったこの世界・・・、 「もう、生きることなんてうんざりなのに・・・」  だが、身体が生きろという。 「生きたって、また人に拒絶されるだけなのに・・・」  でも僕は、それでも他人のいる世界を望んだ・・・。 「そう、望んだ・・・」  でも、いるのはアスカだけ。 「・・・アンタが望んだ世界に・・・、なぜアタシとアンタだけなの・・・」  分からない 「分からないよ・・・、僕は・・・僕は・・・!」  僕は・・・どうすれば・・・いいんだ・・・。 「・・・アタシはイヤ・・・、アンタなんかと二人だけなんて・・・、絶対にイヤ」  なんで・・・? 「なんでアスカは・・・僕を助けてくれないのさ・・・」 「・・・アンタはアタシを・・・助けてくれなかったから・・・」  そう・・・助けてくれなかった。 「僕は・・・望んだのに・・・皆と生きることを望んだのに・・・」  なのに・・・、なんで誰もいないのさ・・・。 「それは・・・、アンタが心のどこかで・・・」  心のどこかで、まだ他人を恐れているから。 「じゃあ・・・なんでアスカは・・・ここにいるの・・・?」 「・・・アンタがそれを望んだから・・・ここにいるのよ・・・」  僕が望んだから・・・? アスカといることを・・・? 「アタシは・・・アンタなんかと居たくない・・・」  だって・・・、アタシには、必要ないもの・・・。 「僕を見捨てないでよ・・・、僕にはアスカが必要なんだよ・・・」 「・・・アタシには・・・、必要ない・・・」  だったら・・・、アンタなんて居ない方がいい・・・。 「アンタなんて・・・いてもアタシを・・・、傷つけるだけだもの・・・」  だから・・・アンタは・・・、死んでしまえばいい・・・。 「アスカ・・・?」  アンタは・・・いらない存在なのよ・・・、アタシにとって。  だから・・・。 「―――死になさい、シンジ」  第1話に続く。
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