「あなた、ご両親は?」
「・・・・・・・知らない。人攫いにさらわれたから。・・・・・アタシには西戎の血が入っているんだって、高く売れるからって・・・・・・・・。」
「じゃあなぜここに居るの?」
「はぐれた・・・・・・。」
間をおいて熟考し始める人影。そして・・・・
「あなた、お名前は?」
「・・・・・・・・ラングレー。」
「仙人になるには似つかわしくないわねぇ。・・・あなた、明日から『明日香』と名乗りなさいな。」
「明日香・・・・・・・・。」
「ほらほらぁ、もっと集中しなきゃ!」
中華の地よりはるか西、天嶺山脈の奥深く、中華では古来より西王母が棲むといわれるここ『崑崙(コンロン)』は天地創造の頃より人と共に、そして人里離れて生きてきた仙人達の数少ない住処であった。
「明日香ちゃん、そんなことじゃ立派な仙人にはなれませんよ。」
「そ、そんなこといったってぇ〜〜。」
はじめの頃は仙人も自称が殆どであったがこの頃になると免許制となり、それにはきびし〜い試験が待っているのであった。
「も、もうだめぇ〜〜〜。」
そういうとその場にへたり込んでしまう明日香。
「あらあら、もうお終い?」
呆れたように微笑みながら話しかける女性。
「そんな事言ったって、こんなもの運ぶのなんて絶対無理よぉ〜〜!!」
と明日香が指差す先には、今しがたまで明日香が運んでいた天嶺山脈の永久氷河500kg
の塊があった。
「それくらいで音を上げてちゃ駄目よ。ママなんて試験前には1tを軽々と運んでいたのよ。」
そう、明日香に仙人になるための修行をつけているこの女性こそ明日香の母にして崑崙切っての大仙人、『竜吉匡壺公主』その人である。
「そりゃぁ、ママは崑崙切っての大仙人だしぃ、私は所詮人間界からの拾われも・・・・・」
「明日香!!」
公主の甲高い声が当たりに響いた。
「あっ!!・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・ママ・・・・。」
事実、公主は明日香の実の母親ではない。明日香が独りぼっちになっているのを人間界を散歩中の公主に見つけられ、仙人界である崑崙へと連れてこられたのである。そして匡壺は明日香を誰はばかることなく自分の娘としてこれまで育ててきたのである。
故に明日香には自らの出自を卑下することを禁じ、また、自分と同じく優れた仙人にするべくきびしい教育を施してきたのである。
「・・・・・・・・・・・・・分かればいいのよ。」
その瞬間、厳しかった匡壺の表情が一編に柔和なものになり、ばつが悪そうに俯いている明日香の肩に優しく手を添えた。
「ママ・・・・・・・。」
ドォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
その瞬間、はるか前方でとてつもなく大きな音が響いたかと思うと、
「運びました・・・・・・。」
青髪の少女が明日香と同じ氷河の塊を前にして、手をはたきながら匡壺に視線を送っていた。
彼女の名は澪。そして明日香と同じ人間であること以外明日香には知らされていなかった。
そう、彼女も明日香と同じく、明日香より後に人間界から匡壺によって連れてこられたのである。
明日香はこの少女の事がどうしても好きにはなれなかった。
明日香にしてみれば第一印象からしてあまり良くなかった上に、いつも何を考えているのか分からない無表情に加え、時折見せる何かよからぬことを考えているような笑みと、特に最近になって誰も居ないところで何かを見つめながら
「あと少し・・・・・・、あと少しで・・・・・・・。」
と何やらわけの分からない独り言を喋っているのを聞いてしまっては好きになれと言うほうが酷だというものである。
「あらあら、澪ちゃんに先越されちゃったわねぇ。」
「くっ・・・・・・!!」
明日香としても、自分のいけ好かない人間に先を越されるのは不満である。しかしそうは思っても、如何ともし難い塊(げんじつ)が目の前にはあった。
「この分じゃあ、明日香と一緒に出かけるのは当分無理みたいねぇ。」
ここ崑崙の、そして仙人界の掟として仙人になれない限りは外界に出れないように、外出に関しては厳しい制限がかけられているのである。
その理由は当然、人間からすれば異能の能力を持った仙人が人間界でその力を使って人間界に影響を与えないようにする為であり、その逆もまた然りである。故に、匡壺が明日香、そして澪を連れてきた時などは崑崙中を巻き込んだ大論争へと発展し、最終的に匡壺の人柄と仙人としての力量を見込んで一任されたと言う経緯がある。
また、普通の人間ならばすぐに諦めるような厳しい修練に明日香が喰らいついてきたのにもそこに理由がある。なぜならば明日香が仙人になりたがる真の目的は仙人となって匡壺と共に親探しをすることであり、そのことは既に匡壺と確約済みなのである。そして、このことこそがアスカを厳しい仙人の修練へと駆り立ててきた、かつ匡壺が明日香を修練へと駆り立てる最終手段なのであった。
「!!!」
勿論匡壺が最終手段と言うほどのモノが効き目がないわけはなく、改めてそのことを思い起こされた明日香はさっきまでの消極姿勢はどこへやら、せっせと塊を運び出して澪と並んだかと思うと、あたかも澪に見せ付けるかのように盛大な音を立てて手をはたくと、匡壺にニッコリと微笑を送った。
(続)
後書き
え〜、どうも。WASYAと申す者です。
今回Makkiy様のサイトへ相互リンク記念として初投稿させていただきました。
まぁ、相互リンクの期日からはかなり月日が経っていますが、そこはご愛嬌と言うことで・・・・(藁)。
この小説は小生のサイトに掲載中の小説の外伝的プロローグとして、先日Makkiy様より投稿の許可を頂いた瞬間から構想を練りつつ書き始めたのですが、いつもなら早くても1〜2ヶ月でやっとこさ一本書きあげるくらいの小生が、普段の小生らしからぬハイスピードで次々と書き上げていって、とうとう許可を頂いてから2日にして書き上げてしまったのです(苦笑)。
故に、今までの2ヶ月かけて書いた小説ですら自信がないのに、こんなハイスピードで書き上げたことは今まで経験がありませんので、余計に拙いかと思われます(ーー;;;;)。その上、特に出だしのところなどはあるアニメのOVAから拝借したので、分かられる方にはお分かりになられるかと思います。(^^;;;;)
兎に角っ(必死)、本文を見ていただくとお分かりになられるとおり、この小説は(ハゲしく拙い癖して)続き物として書いていく予定です。ので、頑張ってどんどんと筆を進めていく所存ですので、これからも何卒宜しくお願い致します。
WASYAさんから投稿小説を頂きました〜。
投稿小説初の連載ということで! 凄く期待しておりますです。
仙人ネタとは、いやはや自分には思いつきもしないネタですね、WASYAさんには恐れいります。
次回のご投稿、お待ちしております。
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