「ママ〜っ!!ママ〜!私選ばれたのっ!崑崙を守るエリート賢仙なのっ。仙界一なのよっ!!」







「誰にも秘密なのっ!でも、ママにだけ教えるわね。」








「いろんな人が私を認めてくれるわ。だから、淋しくなんかないのっ!」







「だから澪が居なくたって大丈夫。淋しくなんかないわ。」









「だから見て。私を見て!!」







「ねぇ、ママッ!!」










バンッ!!!!








































「とうとうこの日がやってきたわね。」

























この日明日香はここ崑崙の仙人試験の中でも1・2を競うほどの難関、『賢仙』の試験会場に来ていた。


































あの日からも日夜匡壺の厳しい特訓に耐えてきた明日香達は晴れて仙人の試験にパスして、崑崙の仙界史上数少ない人間の仙人となることが出来たのである。















「やったわね!!明日香ちゃんに澪ちゃん。」





「まぁね、あんな試験私からすればお茶の子さいさいだったわ。」





「・・・・・・・・・・。」














匡壺の歓喜の言葉に胸を張って答える明日香と、相変わらずの無表情な澪。







「特に、明日香ちゃん。これでやっとママと一緒にご両親を探しに行けるわね。」




嬉しさのあまり歓喜の涙を流しながら話しかける匡壺。




「で、そのことについてなんだけど・・・・・・・。」





あたかもばつが悪そうに小声で喋りだす明日香。





「え、どうかしたの?嬉しくないの?」




満面の笑みが返ってくると思っていた公主にとっては、予想外の反応だったため多少驚きつつ聞き返した。




「ん〜ん、そりゃあ勿論嬉しいわよ。嬉しいけれど・・・・・・・。」



「嬉しいけれど、何?」





「私・・・・・・・・・・・私、まだやりたいことがあるの!」









明日香の予想外の申し出に、少々面食らってしまう公主。











「やりたいことって・・・・、明日香ちゃん、一体何なの?」











その瞬間、俯き加減だった明日香がキッと匡壺の顔を見据えると、かなり前から心に決めていたのであろう言葉を口にした。





















「ママ・・・・・・・・私、賢仙になりたいっ!!。」




































明日香と同じく賢仙の試験を受けに来たのであろう人ごみの中で、自らの受験票を握りしめると、



「明日香、行くわよ。」





と心の中でつぶやいた・・・・・・・







































「明日香ちゃん、あなた、自分のいっている意味分かっていて言ってるの?」







先ほどとは比べ物にならない程の衝撃を受けた匡壺は、少なからず顔をこわばらせたまま明日香に問い返した。











「勿論わかってるわ。賢仙の試験が尋常じゃない程に難しいことも、そしてママがその賢仙だって事も。」
















崑崙の仙界には普通の仙人の上に『闘仙』と『賢仙』という階級が存在する。彼らは普通の仙人とは違い、崑崙の関するあらゆる決定事項について優先的な発言権を持っている代わりに、崑崙に有事あれば率先して矢面に立つ義務を負っているのである。また、読んで字のごとく闘仙が武を、賢仙が智を司っているのである。





そして匡壺はその賢仙の資格をはるか昔より所持しており、今では賢仙の中でも古参の部類に入り且つ1・2を争うほどの実力者なのである。




また匡壺自身も明日香達に対して、『一人前の仙人になってもらいたい、出来れば闘仙か賢仙にでもなってくれれば・・・・・・』とは思っていたが、まさか明日香本人の口からそのことが出来てくるとは夢にも思わなかったのである。













「でもそれはとても危険なことなのよ、明日香ちゃん。」
















『闘仙と賢仙は崑崙の有事に際していの一番に対処に当たる義務がある』と言うことは、普通の仙人よりもより危険な場面に対処しなければならないと言う危険も孕んでいるのである。しかも、ただでさえ人間よりも能力の高い仙人をして『有事』と言わしめることに対応しなければならないのであることからして、危険度は計り知れないものがある。そしてそれこそが匡壺が『闘仙か賢仙にでもなってくれれば・・・・・』と思っていても口に出来なかった一番の理由なのであった。


















「勿論そのことも十分分かってるつもりよ。・・・・・・でも私考えたの。今のままでも私の夢だった親探しにママと行くのは可能だわ。けれどもし今のまま行ったとして、その途中で何かあったらママは賢仙だからすぐに対処に行くでしょうけれど、私はその時は多分崑崙への報告にまわされると思うの。・・・・でもそんなのいやっ!!私ママを危険な場所に一人置いたまま自分だけ逃げるなんてできっこない!!!」









「でも、普通の仙人がほかの賢仙や闘仙よりも先に対処することは禁じられているわ。だから、その場合はどう頑張っても私は帰るしか方法は残されてない・・・・・・・。だから私決めたの。私も賢仙になるって。賢仙になって何があってもママと一緒に居れるようになるんだって!」








「明日香ちゃん・・・・・・・。」




明日香の悲壮な覚悟を、何もかも承知の上で出した答えを神妙な面持ちで聞く匡壺と飽く迄無表情な澪・・・・・。








「・・・・・・・・・・・・・分かったわ。明日香ちゃんがそこまで分かった上で覚悟をしてるんならママはもう何も言わないわ・・・・・。でも、ママも仮にも大賢仙と呼ばれている仙人、目の前で賢仙になりたいって言う人が居るのに指を咥えてみてるわけにはいかないわ。ここは一つママが賢仙の特訓をつけてあげる。」




「ほんとにっ!?!?」



「ええ、ほんとにほんとよ。でも覚悟しなさい、賢仙の厳しさを嫌と言うほど叩き込んであげるから。」








その喜びのあまり明日香は匡壺の手を取り飛び上がらんばかりにはしゃぎ回った。そしてそのはしゃいでいる二人の横で澪が邪な笑みを浮かべていることに気付くものは誰も居なかった・・・・・・。



























そして結果発表当日、喜び勇んで家へと帰ってきた明日香の目にいつもの匡壺の微笑む姿が映ることは決してなかった・・・・・・・・。






























(続)


WASYAさんより連載第2話にあたる中編その1を頂きました〜。毎度ありがとうございます。
これでまた我がHPも大繁盛間違いなし!(待
それはともかくとして、少しシリアスな展開になってきましたね、まさに自分好みの味付けです(笑
では、次回を期待して待っております。

[戻る]