カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカ・・・・・・
「え〜〜〜〜〜、それでは採決を取りたいと思います・・・・・・・」
カッカッカッカッカッカッカ・・・・・・
「賢仙『竜吉匡壺公主』の仙人資格抹消に異議なき方のご起立を願います・・・・・・・」
カッカッカッカッカッカ・・・・・
「え〜〜〜、では賛成多数のようですので本件【賢仙『丑』総主、『竜吉匡壺公主』の賢仙及び仙人資格の抹消】は可決されま・・・・・・・・・・」
バンッ!!!!
「待ってください!!!」
「ここが・・・・・・・・・・・人間界・・・・・・」
そうつぶやくアスカの眼下には、限りなく雄大な黄河と中華の自然とがこれからのアスカの苦難を象徴するかのように待ち構えていた。
「いきなりなんだね。今は重要な議題の採決中なのだよ。」
「第一君は誰だね?ここは一般の仙人が勝手に入ってきてはいけないところなのだよ。」
予想もしていなかった闖入者に議決を邪魔され、非難の目がその闖入者へと注がれる。
「突然のご無礼、お許しください。私は賢仙『亥』の明日香と申します。」
「賢仙『亥』の明日香・・・・・、あぁ、この前の賢仙試験で唯一受かったという・・・・・・。」
「はい、そうです。」
「で、その明日香くんは一体ここに何の用で来たんだね?」
「第一、賢仙なら尚の事知っていよう?ここはそれぞれの賢仙・闘仙を統括する総主と元始天尊さましか入れないのだよ。」
未だ非難の声は覚めやらず、それどころか闖入者の詳細が分かったことにより言葉に含まれる『とげ』は一層太くなるばかりであった。
「そのことも重々承知の上です。ですが、この度はそれを犯しても尚お願いしたい議があってまいりました。」
明日香自身も仙界のトップの会議の場に足を踏み入れることの違反と非難は覚悟の上での乱入であった。
「・・・・・・・その願いと言うのは?」
議場の一番奥深くから、今までにない低い声が聞こえてきた。
「それは・・・・・・・・それは・・・・・・・・・・・。」
「『それは』ばかりいってないでさっさと答えないかねっ!折角の元始天尊さま直々に尋ねられているのだよっ!!」
「元始天尊・・・・・・・さま・・・・・?!」
その言葉に明日香は思わずはっと視線を上げると、その元始天尊と思われる老人がバイザー越しに自分を見つめているのが目に入った。
そして自然と元始天尊と見詰め合う形になった明日香は、その視線に後押しされるように思い切って議場いっぱいに響くがごとく叫んだ。
「お願いですっ!ママの、竜吉匡壺公主の資格を取り消さないでくださいっ!!」
「この広い世界のどこかに、アイツが・・・・・・・・アタシからママを奪った澪が居るのね・・・・・・・・・」
今まで崑崙という狭い世界の中でのみ生きてきた明日香にとって、あまりにも雄大すぎるそれは威圧感を与えるのには十分すぎるほどであった。が、恨み・憎しみに燃える今の明日香にとってそんなことは既に関係がなかった・・・・・・・・・・・・・
「『取り消さないでください』っといわれてもねぇ・・・・。」
「左様、その件については詮議の結果たった今資格抹消が決定されるところなのだよ。」
「第一、一介の賢仙が総主の決議について異を唱えるなど以ての外だ!!」
「それに、ここは君のようなにが居てはいけないところなのだよ。さぁさぁ、帰った帰った。」
「そ、そんな・・・・・・・・・・・」
明日香としても到底聞いてくれるとは思えないことは予想はしていたのだが、あまりの冷たい対応に愕然としてしまい、ただ首をうなだれるばかりであった。
「ほらほら、何をそこで突っ立っているのかね?さっさと出て行ったらどうなんだね?」
あたかも異物を排除するがごとく、しっしと手を振る総主。
その言葉にカチンと来た明日香は、顔を上げてその総主を睨みつけると必死に食い下がった。
「ならば今一度っ、今一度お教えください!確かに元始天尊様やほかの総主の方々に何も言わないまま姿をくらませたのは悪い事だとは思います。ですが、それだけでママの賢仙としての身分が、仙人としての資格が抹消されるものなのでしょうか?!」
「ほう、それはどういう意味なのかね?」
明日香の必死の質問にも動じることなく、少し甲高い声の総主が問い返した。
「それは・・・・・・・・・、それは、仙人にはこの崑崙から外出してもいいという権利があります。・・・・・・ですから今回のママの、いえ、竜吉匡壺公主の行動は何かの・・・・・・、そう、何か急な事情でどこか遠いところへ出かけなくてはならなくなったとお考え頂くことは出来ないのでしょうか?」
『ママは何も悪くない、絶対にどこかで生きている!』その気持ちが言わしめた言葉であったが、その明日香の想いは脆くも崩されることとなった。
「君は、何も知らされていないようだね・・・・・。」
一人の総主が勝ち誇ったように話し出した。
「何も、・・・・・・・とは一体?」
「いいだろう、教えてあげようではないか・・・・・・・。」
と、また先ほどのとは別の総主が口火を切った。
「いいかね。われわれ総主は自らの号を冠した賢仙・闘仙を管轄する義務がある。それは君も知っているね?」
「はい、存じております・・・・・・。」
崑崙の賢仙と闘仙はそれぞれ『子』から『亥』までの12の所謂「組」に分かれており、常時総主を含めて各組五人からなっている。そしてそれぞれの総主は己の組を統括・管轄する義務を負っているのである。
「それに加えてわれわれ総主には、一般には知られていないもう一つの義務があるのだよ。」
「もう一つの義務・・・・・・?」
「そうだ。そしてそれこそが今回君の母親である竜吉匡壺公主の資格抹消の要因なのだよ。」
「ママが・・・・・・、ママが一体どんな悪いことをしたのと言うのですかっ!?」
『ママは何も悪くない』と心から信じている明日香にとって、公主を悪く言われることは到底耐えられるものではなかった。
「いやいや、正確には公主が悪いと言うわけではないのだよ・・・・・。」
「では一体誰が・・・?」
「それは私たちも正確には知らないのだよ。だが、調べによると原因は君と同じく公主に育てられた澪・・・・とかいったかな?その『人間』にあるらしいじゃないか。」
「澪がっ!?!?」
明日香にはその言葉は決して信じられるものではなかった。
なぜなら澪は元々賢仙や闘仙になろうとはしていなかったし、明日香が賢仙の修練を受けていた頃に親が見つかったという理由で人間界に帰ったときかされていたのである。
「ですがっ!!ですが彼女は確か人間界に帰っていたはずでは!?」
「それが、どういうわけかまたここに戻ってきていたのだよ。」
「そして、あろう事か公主の玉を奪ってまた人間界に戻っていったと言うではないか。」
「ママの・・・・・・・・・玉?」
「そう。我々総主は総主になった暁に元始天尊様から総主の証としてそれぞれに違った特殊な力を秘めた玉を拝領する。」
「そしてその玉を保持していくことこそ、我ら総主に課せられたもう一つの義務・使命なのだよ。」
「ですが、ママは1・2を争うほどの賢仙と言われた人です。例え一介の仙人でしかない澪が奪いに来たとしても、簡単に取り返せたのではないのですか!?」
今の、公主が総主としての使命を果たせなかったと言う言葉を受け入れたくないがために必死に反論する明日香。
「我々もそれは考えたよ。だが、公主の玉は人心を操る力を備えていてね、澪が奪いに来た現場を目撃してしまった公主はその心の隙を突かれたらしいのだよ。」
「ですが、何故総主様方々はそこまで詳しく現場の様子がお分かりになられるのですか?」
「君ねぇ、我々の力を舐めてもらっては困るよ。我々も彼女と同じく元始天尊様から玉を拝領していてねぇ・・・・。その中には『過去見』ができるのだってあるんだよ。」
なるほど聞けばもっともな話である。がもっともであるが故に余計に明日香にとっては悔しくてたまらないのである。
「まっ、そういうわけだから実に惜しいことだが彼女には仙人を辞めてもらうことにしたのだよ。」
「さて、これで諦めはついたかね?さ、帰った帰った。」
現実を理路整然と説明されても尚明日香には諦めることが出来ず、どうにかして公主の復権は出来ないものかと考えて考えて考え込んでいた。
そして考えつくした結果、明日香はとんでもないことを口にした。
「だったら・・・・・・・・・・・・・・・だったら私が澪から玉を取り返してきます!!」
(続)
後書き
え〜、毎度どうも。WASYAです。
今回もまたもや早々と完成してしまいました(^^;;;;;)。
まぁ、このSSはMakkiy様の一周年記念も兼ねていますので、出来れば早いうちに完結したいと思ってはいるのですがね(笑)。
そして今回の出だしは・・・・・・・・・はい、例のLAS人殺しのあの部分から拝借して来ました(藁)。それと、総主や元始天尊のお歴々は某数字板の方々をそのまま持ってきました(爆)。
既に本編の方をほっぽって書き続けていますが(^^;;;)、まぁこっちのほうはプロローグですし先に完成しても間違いじゃないでしょうしね(笑)。
後は後編を残すのみですので、頑張って完成させたいと思っております。
では。
WASYAさんから第3話目にあたる中編ソノ2を頂きました。
実はこれ、中編その1と一緒に送ってくださって、前回、「次回を期待しております」
と書いたのですが、もうその時点で頂いていたということなのです(汗
それにしても犯人が澪とは・・・<確信犯 WASYAさん、たっぷりと澪ちゃんを可愛がってあげてください(笑
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