自分の意志を裏切るな!
自分に嘘をつくな!
言い方を変えますと、要するに勝ちたいという気持ちは誰でも持っているんですが、でもその意欲を日常生活の中でたいがいの人が裏切っているんですよ。たとえば、こうしなくちゃいけない、あるいは、自分と約束したことがあっても、たいがいの人がどっかでそれを、裏切って生活していますよね。それは自分に嘘をついてることなんです。こうするぞって決めたことに関しても、それから他人とこうしようって決めた事に関しても、裏切った事のない人などいないと思います。でも、都合のいい時だけ自分の意志を通したいわけですよ。今、言いましたように、日々、自分を裏切り、自分で自分の意志を挫いている人がですよ、都合のいいときだけ意志を通そうとするわけです。日常生活の中で、自分の意志を通す訓練をしている人が、初めて、仕事の現場で自分の意志を通せるわけです。桜井さんは、「自分に嘘をつくな。」ということを常におっしゃってます。 自分に嘘をつくことは、自分で自分のことを分からなくするわけです。人はよく、「私のことわかってよ。」って言いますよね。「なんで俺のことわかってくれないんだよ。」と。でも、そういう本人と言えば、実は、やっぱり嘘をついて生きていますから自分のことがわからなくなっているんです。嘘をつくと、言葉と自分の心の間に分裂が起きます。あるいは自分の言葉と行動の間に分裂が起きます。要するに本音と建前という、いわゆる分裂症の人間になっていくわけです。そうすると他人ももちろん、そういう本音と建前のある人間を信じませんよね。本音と建前を使い分けて生きている人は、自分で自分が嘘つきだってこと、一番よくわかってますから、自分で自分のことを信じませんよね。で、自分で自分のこと信じられない奴がですね、だんだんいつの間にか、自分で自分のことがわからなくなるわけですよ。だって、自分を信じれないわけですから、自分のことがわかんなくなっていく。言い換えますと、何が良くて何が悪いのかについての感覚、内的な感覚あるいは、見極める心の力と言ってますが、それが鈍くなっていくんです。麻痺していくんですね。自分で自分に嘘を平気でつきますから。他人の嘘にも、敏感に反応できなくなるんです。ですから、本物と偽物の区別がつかなくなるし、良いことと悪いこととの区別があいまいになっていく。気がついたときには会社のお金を横領してたりとかね、そういうことで、人生を台なしにしてしまうということになります。ですから、「私のことちっともわかってくれないっ。」と、相手を責める前に、じゃあ、自分で自分のこときちっとわかってるのかってことなんですね。でもわかってないんですよ。自分で自分のこときちっとわかってないのに、他人にそれを要求することに、まず無理があるんですね。本物と偽物の区別がつくとということは、要するに見極める心の力があると言うことなんです。それを、昔は心眼と言いましたが、その心眼を育みたいと思ったら、まず自分に嘘をつかない訓練を日々課す事なんです。実は、今お話ししました、嘘をつかないですとか、物事を2つに分ける考え方が間違っているというこの話は、全部陽明学につながる話なんです。 |
林田明大講演録より