陽明学予備知識

林田明大より皆さまへ:陽明学に初めて接する方への予備知識
 中国は明の時代中期に活躍した王陽明は、陽明学の創始者として知られていますが、思想家としてだけでなく、政治家、教育家、武芸者、兵法家としても超一流の、つまり文武両道の達人だったのでいす。
 その王陽明の思想は、江戸初期の中江藤樹に悟りを開くきっかけを与えました。以後、藤樹は日本陽明学の祖と言われることになるわけです。というものも陽明学はその後藤樹の高弟熊沢蕃山、陽明学の中興の祖といわれる三輪執斎、当時日本一の書家と称された北山雪山、赤穂の義士たちを支援した雪山の門人の細井廣澤、幕府の昌平校(日本で唯一の国立大学)の教授・佐藤一斎、大塩平八郎、吉田松陰、高杉晋作、藩政改革家として知られる山田方谷、二松学舎大学の創立者・三島中洲、河井継之助、西郷隆盛、明治の海軍軍人・広瀬武雄、政財界のフィクサーと称された安岡正篤らに代表されるそうそうたる人々を誕生させたのです。
さらに、陽明学は、我が国の仏教やキリスト教へも多大な影響を与えました。
財界人で学んだ人といえば、宇部セメント社長・渡辺祐策(素行)、関西政財界の重鎮・濱岡光哲、藤田組(現在の藤田観光・同和鉱業)の創始者・藤田伝三郎、伊藤忠商事・丸紅の前身の「紅忠」の伊藤忠兵衛、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎、大蔵財閥の創設者・大倉喜八郎等、様々な人々を挙げることができます。江戸期のみならず、明治の政財界の重鎮たちは、やはり陽明学によってその心を鍛えたのです。

林田明大(はやしだ あきお)プロフィール
 1952年長崎県生まれ。セツ・モードセミナーにてファッション・イラストを学び、総合武道<新体道>の青木宏之氏に師事、またニューヨークアクターズ・スタジオ正会員のゼン・ヒラノ氏やDJの糸井五郎氏に表現を学ぶ。一方でゲーテ、シュタイナーを中心に洋の東西の哲学・思想、モダンアートを独学した。94年に『「真説・陽明学」入門』(三五館)を発表して陽明学の通俗的な誤解を解消、実践哲学として復活させた功績が注目を集め、97年「国際陽明学京都会議」において演壇にたつ。現在は執筆活動のかたわら、講演活動を精力的に行っている。(有)未来プランニング代表取締役。主な著書:「雀鬼と陽明」「財政の巨人」「心が技術に勝った」(いずれも三五館)「陽明学と忠臣蔵」等がある。現在「陽明学入門(講談社)、「ジョン・レノンとプライマル・スクリーム療法(仮)」(インタービーイング出版)を執筆中。