ARTの途中       2009/01/23


めでたいこともないのに
ヘネシーのコルクを抜いた
ソファーから身体半分カーペットにずり落ちたまま
厳かに僕はふりかえる
一体誰が本物で
誰が偽物だったのか
 
グラスに手を伸ばし
グビリグビリと飲めば
心は氷の刃(やいば)のように尖(とん)がり
居並ぶ被告たちを震えあがらせる
 
本当は今はもう許せるんだ
目指しているものが違ったのだから と
許せないのは自分自身
老いを口実に退化を受け入れようとしていた僕
スピードは落ちたが
まだまだ走り続けられるというのに
 
窓の外には冬の月がいて
寒々しい青い光を投げた
 
 
 

 
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