めでたいこともないのに ヘネシーのコルクを抜いた ソファーから身体半分カーペットにずり落ちたまま 厳かに僕はふりかえる 一体誰が本物で 誰が偽物だったのか グラスに手を伸ばし グビリグビリと飲めば 心は氷の刃(やいば)のように尖(とん)がり 居並ぶ被告たちを震えあがらせる 本当は今はもう許せるんだ 目指しているものが違ったのだから と 許せないのは自分自身 老いを口実に退化を受け入れようとしていた僕 スピードは落ちたが まだまだ走り続けられるというのに 窓の外には冬の月がいて 寒々しい青い光を投げた |