「苦しかったよ」と呟いて傾けるジョッキに 友は「俺だって」と語り始める 居酒屋の窓に浮かぶ白い月は いまでは何も答えてくれない 商店街は作り笑いを浮かべ 他人の金でうらぶれたパレード むなしさを埋めるための反戦プラカードもなく すべてを抛つほどの夢もなく プラトニックな愛すらもなく もはや詩を売るひとりの少女もいない 俺たちがいま一番必要なものは 甘い恋や夢でなく 遠い空から降ってくる 白雪姫の毒リンゴ そう泉谷しげるが歌った毒リンゴを もしも貪り食ってしまっていたとしたら いまさら永い眠りの時代の恨み言はいえない 嗚呼 琥珀色の海に漂う焼きシシャモの群れよ 泡しぶきの白き波を引き裂く小海老の唐揚げたちよ 小天狗の窓に浮かぶ白い月は いまでは何も答えてくれない |