白雪姫の毒リンゴ      2000/04/23


「苦しかったよ」と呟いて傾けるジョッキに
友は「俺だって」と語り始める
居酒屋の窓に浮かぶ白い月は
いまでは何も答えてくれない
 
商店街は作り笑いを浮かべ
他人の金でうらぶれたパレード
むなしさを埋めるための反戦プラカードもなく
すべてを抛つほどの夢もなく
プラトニックな愛すらもなく
もはや詩を売るひとりの少女もいない
 
   俺たちがいま一番必要なものは
   甘い恋や夢でなく
   遠い空から降ってくる 白雪姫の毒リンゴ
そう泉谷しげるが歌った毒リンゴを
もしも貪り食ってしまっていたとしたら
いまさら永い眠りの時代の恨み言はいえない
 
嗚呼
琥珀色の海に漂う焼きシシャモの群れよ
泡しぶきの白き波を引き裂く小海老の唐揚げたちよ
小天狗の窓に浮かぶ白い月は
いまでは何も答えてくれない
 
 

 
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