60−70年代フォークソング
プライベート Favorites−12×2フォークがまだアングラソングと呼ばれ、夜明け前の薄闇の中にあった頃、ラジオの世界では、それぞれの局ごとに、自らをパーソナリティーと称する個性的なディスクジョッキーたちが人気を争っていました。
僕らより少しだけ兄貴分で、テレビとは一線を画した番組づくりを考えていた彼らが、リスナーたちと共感しあうためのひとつの手段として、その頃ギター一本で自作自演していた、長髪にジーンズ姿の不遜な若者たちの、未熟な手作り音楽と《メッセージ》に注目し、光を当てたという幸運がありました。
ある意味で、彼らパーソナリティーたちの手によってラジオの電波に乗ることができた曲だけが、僕らの耳まで届くことが可能だった時代。
テレビに出ないフォーク歌手たちについては、マイナーな音楽雑誌から譜面や諸々の情報を仕入れる程度で、あとは、限られた数のコンサートにいくだけ。僕が覚えているのは、岡山では、吉田拓郎や井上陽水、「夕暮れ時はさみしそう」のNSP、かぐや姫、加川良、西岡たかしと五つの赤い風船、古井戸、イルカくらいだったでしょうか。
フォークが次第に市民権を得ていく過程では、テレビ出演是か非かといった議論もありました。吉田拓郎はコンサートの最中に、僕の席の後ろの方の一団から、フォーク界の裏切り者として「帰れ!」と叫ばれます。そんな時代もありました。
Side A
区分 曲名 アーティスト 言い訳めいたコメント 1 伽草子 吉田拓郎 「祭りのあと」や「ペニーレーンでバーボン」など、好きな曲はやたらと多いし、とても1曲には決められないけど、とりあえず。 2 スーパーマーケット 小室 等 初めて買ったLPは『私は月にはいかないだろう』。これはLP『明日』から。 3 The Only Living Boy in New York
(ニューヨークの少年)サイモンとガーファンクル Sound of silence や Boxer と並んで好きな曲。 4 夢一夜 南こうせつ 時代的には「ひとりきり」や「加茂の流れに」になるけど、カラオケではこっちをよく歌った。 5 教訓U なぎら健壱 もちろん、加川良の「教訓T」のパロディー。ひたすら、彼のギターテクと、あの怪しい笑顔の人柄が好き。 6 生活の柄 高田 渡 ギターといえばストロークかアルペジオで弾いていた僕としては、ツーフィンガーピッキングはこの曲が初体験。 7 下宿屋 加川 良 「東京」や「戦争しましょう」もよく弾きました。きまじめで、無骨。わがままでちょっとずるっこいところも感じる拓郎とは、タイプとしては対極にあるという印象。拓郎の「加川良の手紙」を聴くと、いかにもという感じで、ますます加川良が好きになると思う。 8 おとぎ話を聞きたいの 西岡たかしと五つの赤い風船 幻想的なステージが印象的だった。 9 アルカンシェル 加藤和彦 髪とひげを伸ばした人生の伝道師のような人たちからは「おもちゃ屋さん」とさげすまれていたけど、すごい綺麗なギターテクニックは追随を許さない感じだった。 10 抱きしめたい はっぴいえんど フォークじゃない? いや、多くのフォークシーンで常連だった彼らは別格。これは、(歌詞が聞き取れないという人もいるが)ボーカルも見事に曲のパートのひとつと化して不思議な世界を醸し出している曲。 11 22歳の別れ 風 失恋したときのことを思い出しては、くちびるを噛んでしまう。 12 面影橋から 及川恒平 つらい歌でも、颯爽としてきれいな感じがあるから好きだったのか。
Side B
区分 曲名 アーティスト 言い訳めいたコメント 1 夏まつり 井上陽水 いまでも、信じられないほどに色あせていない曲。 2 国旗はためく下に 泉谷しげる 彼の歌から一曲選ぶなら、迷うことなく、僕はこれ。 3 カレーライス 遠藤賢司 当時は歌詞の意味も分からずに、ただ、独特の個性に好感を持って口ずさんでいた気がする。 4 夜が明けたら 浅川マキ 売れないフォーク界で、ひとりだけどんどんヒットを飛ばしていた印象があるけど。一瞬、まぶしく輝いた人。 5 ねつかれなくて リリイ 自然な言葉で、でも、言い放つ内容は鋭く。 6 僕の好きな先生 RCサクセッション いまだスタイルを変えない忌野清志郎が好きというだけの話か。 7 たづるさん 高石ともやとザ・ナターシャセブン この歌の頃から、少しずつ彼の優しさに惹かれてきたような気がする。 8 紙しばい 岩井 宏 つらいとき、ひとり部屋で、これをよく歌ったなあ。 9 ちどり足 古井戸 「1000人集まってさわぐのがお祭なら、ひとりでお酒を飲むのもお祭り」と、LP「古井戸の世界」に書いてある。「さなえちゃん」では大騒ぎしたくせに。 10 一本道 友部正人 まだ若いうちから、どうしてこういう振り返る歌ばかりが好きな世代だったのだろう。 11 少女 五輪真弓 当時の曲としては、これかな。 12 スタンド・スティル 小椋 佳
星 勝この曲は時代的には少し後になるけど。加藤和彦が「おもちゃ屋さん」なら、小椋佳は、「劇作家」とでもいうべきか。
思い付くままにふらりと作ってしまいました。深く検討を加えておりません。結果的にSideA、Bから漏れてしまいましたが、ジャックス、ジローズ、アリス、チューリップ、オフコース、海援隊、荒井由美、ザ・ディランU、シバ、斎藤哲夫のみなさんも好きでした。
節操がないと思う人もいるかもしれませんが、好きなものは好きなんです。