月光をグラスに浮かべて       2008/01/25


夜の囁きに耳を貸せば
静けさは潮騒のようでもあり
轆轤に置かれた粘土のようでもある
 
壁の外を通り過ぎるのはあのシャムネコだ
甘ったれた声に狂気が混じる
誰彼からとなく施しを受けては
後悔の夜を彷徨う
 
僕は穏やかに笑い
窓際でグラスを構えている
めかし込んだレースのカーテン越しに
舞い降りた月光をすでにグラスに浮かべて
そうとも
さっきから上機嫌で眺めてはいるものの
わざとそこから踏み出さないでいる
周到に演出された
極上の夜に
 
 
 

 
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