春の旅      2000/04/09


山峡の渓谷は
若者を祝福しているのだろうか
暖かな日射しに媚びるウグイス
散乱する渓流の光線
桜たちは水に映える姿を誇らしげに競い
深みではヤマメが息をひそめて
 
流れを分かつ巨岩の上には
白髪の老人たちが陣取り
草の上では
酔っぱらった女たちが笑っている
 
 
乾いた風が運ぶのは
突き刺さる言葉
背中のキスリングには
読みかけの文庫本に残した栞と
結末のないシナリオ
 
 

 
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