冬の蚊       2013/11/10


飛ぶには飛ぶが
勢いはなく
広い部屋の一隅に
たたずむように浮かんでいる
気配を消し
おまえは何を夢見る
もう幕は下りた
観客は誰も残ってはいない
ひとり遊びで孤独を転がしながら
あとはただ
息絶えるときを待っているのか
 
笑いたければ笑うがいい
そうとも
季節は巡る
冬を生き抜けばまた春が来る
すべての草木そうもくは芽吹き
復活を告げるファンファーレも高らかに鳴るだろう
見えないのかい
お馴染みの作り笑いの
古い糸くずのような双眸だが
奥深くでは小さな星が瞬いている
 
 

 
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