いくら悲しみを胸に刻もうと          2000/10/09


郊外には稲穂が広がり
高原の道には秋の風が吹く
茂みに分け入れば
アケビの蔓が灌木に絡みつき
パックリと開いた実もあやしく熟れて
少年のころの冒険の思い出を呼び覚ます
 
誰にも逃避とはいわせない
これは個人的な儀式だ
 
残酷な都市は優しいふりをして
若者たちに煌びやかな夢を見せては
いくつもの皮肉なプレゼントを用意していた
人間の弱みにつけ込む巧妙な罠だ
そして そこにこそ僕らの日々の時間もある
いくら悲しみを胸に刻もうと
そこに僕らの日々の時間もあるのだ
 
いくら悲しみを胸に刻もうと
僕らの人生は続く
臆病者が再び立ち上がるためには
時には儀式も必要になる
幸いにも街には居酒屋があふれ
本棚にはブランディーの小瓶もある
君だってこんな時間から
日だまりの中に座り込みたくはないだろう
さあ カードを配ってくれ
 
 

強がることがいいことなのかどうかは僕にはわかりませんが、ときには、理由もなく意地を張ってみたくなったり、反抗したくなったりすることがあります。
 
 
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