旅立つ心に捧ぐ       2013/08/13



ひとり船に乗り 心躍らせ
僕は何かを待っていたのだろうか
手には馴染なじんだデジタルカメラ
そして肩にはノート型パソコン
これでは行きずりの目には
まるで浮かれた何かの取材旅行だ
相棒のマークXは船底で座り込んでいる
彼のまわりには無数のバイクも息を潜めているはずだった
 
頭に決断のバンダナを巻いた男は
黒光りするヘルメットを置いたテーブルを背に
静かに腕を組み
遥かな波の先に視線を泳がせている
この男と僕との胸に
もしも去来する同じものがあるとすれば
それは過去でも未来でもなく
ただ待ち受ける真っ白い心だろうか
男は淡々と海を眺め
さとされるように僕もそれに習うのだ
僕らを待ち受ける港は函館
 
いざ北の大地を踏みしめ
心は勇む
この地で僕は
何を受け取るのか
カモメは海風に震える天空を鮮やかに切り裂き
おびえたウミネコは虚しく群れ鳴いている
こころ運命ときを超えたところにある
雲の上から貴方は
彷徨さまよう僕に何を教え示すというのか
何かが始まろうとしている
アクセルを踏み込めば
相棒は待ちかねたぞとばかりに咆哮ほうこうした
 
 
 

 
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