夢の骸(むくろ)       2013/04/29


道連れを強いた夢の骸が
いま膝の上に横たわっている
その冷えた身体を優しく撫でることのほかに
僕に何が出来るだろう
闇夜を切り裂くおまえの遠吠えに
かつては真摯に祈りを捧げた信者たちでさえ
あの日の興奮を覚えている者は誰もいない
苔むした虚しさだけが
犯した失敗のすべてを雄弁に物語る
 
正直に言おう
僕はおまえに謝らねばならない
安物のペテン師のように希望を持たせ
欺き続けたことを
本当は石ころなのに
まるで希少な宝石か何かのように
ひたすら磨かせ続けてしまった
 
アコーディオンは旋律を咽び
少女は酔いどれの前で懸命に歌い踊ったが
MARTIN-D-42AJ はハードケースのなかで眠りこけていた
 
道連れを強いた夢の骸に
せつなく遣る瀬なくこうべを垂れていると
鉢巻をした薄汚れたトラックが
黒い煙を吐いて走り去っていった
その尻には商売繁盛のステッカー
半分はがれたままで
いいように風にもてあそばれているではないか
道端の老いた紳士は
黄ばんだ歯を噛み締め思わずこぶしを握り締めたが
猫は屋根の上でニヤリと口元をゆがめ
短くひと声 みゃーご と鳴いた
 
 

 
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