落陽のように       2013/10/24


狩猟犬は首輪を解かれ
夕暮れの薄闇に放たれていた
遥かな遠吠えが聞こえる
猫は物憂げに腰を上げたが
屋根からは離れる気配もない
 
南の風と北の冷気がねじれる
ボウカシの林が揺れ
たくらまれた構図が厳かにゆがむ
待ちくたびれた絵描きは
真っ白なキャンバスを前に沈黙し
バッグの中のポケットボトルに手を伸ばそうとしている
物語を仕上げるための足りないパーツを
もはや補うすべもない
 
冬がそこまで来ている
青臭い時間の束は荷物にまとめて
枯れ草の山に埋葬していこうか
 
 

 
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