静寂の河原 土手に整列した桜たちは 登り来る太陽を待っている 紅を引いた女たちを包んだ夕暮れの妖しの灯火は 春の宴の一部始終を見ていた 無遠慮なカラオケを 白けた気分で聴きながら 年老いた少年たちは歌う 空想のセンチメンタル世界を あたかも通り過ぎてきた思い出として 自分を欺くように歌うのだ そうして全ての欲望を放出し終えた獣たちは やがて力尽き いつしか現実の夜が始まる その瞬間から桜たちは息を殺して 新しい陽射しに備えている 狂おしいほどの命の炎を 内気な月やうわさ好きな星たち 漂う雲に見守られながら 静かに燃やし続けているにちがいないのだ 気まぐれな春の風にむなしく花を散らされながら その身をただ岸辺にさらしているのではない しっかりと力をためて いまにも爆発しそうな魂をなだめながら 登り来る太陽を待っている |