通り雨      1999/07/12


公衆電話の受話器を握りしめて
深い闇と向き合っていた
泣きながら叫んでも押し返せない
氷のような透明な闇だ
 
分かりあえなかったのは彼が父親だったからではなく
男が渡ってきた海の波が運んだ皮肉な贈り物
 
電話ボックスのガラスを打つのは通り雨
伝い流れる水滴は
すべての風景を残酷なジグソーパズルに切り分ける
 
もしも束の間の夢に酔いたければ
古いおもちゃ箱の底から辻褄の合うパーツだけを拾い集めて
自分好みの愛にでも仕上げてみたらいい
 

 
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