故郷(ふるさと)


陽光が さんさんとまぶしい 夏の日
わたしは 祖母と ここをさまよったが
芦田川をつつむ 山々の緑が
夕暮れの さすらう光もない中で
悲しげに微笑むのに 目をくれなかった
 
 
奮い立つ ヒマラヤ杉の老木は
しわがれた腕を 天にうちふり
沈んだ小径を 荒々しく呼びさますーーーー
ああ この 降り注ぐ太陽の輝く光
たちまち わたしを抱き 離さない熱情
狂おしくうめく 篭のカナリア
悶える 山々のこだま(谷牙)
 
 
しかし 夜のとばりは白くひえびえと
枯れたわたしの脳髄と
凍りついた あなたの冷たい胸をつつむ
 

これは僕が故郷の高校を卒業して、悲喜こもごもの思いをすべて包んで胸に抱きしめ、
僕なりの人生の旅路をスタートさせた直後、当時の仲間の文芸誌に投稿した、記念碑
的な詩なのでした。
 
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