《磨家信一氏の審査評》
 ある平凡な少年野球のチームが強豪のチームを相手にして健闘し、惜敗するまでの経過を軽快でスピード感豊かな文体でうまく描いている。
 試合の場面展開にダブらせて、チームの監督とメンバーたち、それに彼らをとり囲む家族などの人物像を、一人一人、いきいきと巧みに描き分け、さわやかな読後感を残す。重厚なリアリズムとか深刻な人間体験のドラマなどとは無縁だが、堅実で行きとどいた表現力があり、又、現代の世相や生活感にも確実に触れた部分もあり、全体としてよくバランスのとれた好短編といえるだろう。


 
もとに戻る