旧友          2001/07/01


時計の針が夜を渡る
たゆたう時は
スナック田麻呂のママの胸
若者は考え深げに
中年は底抜けに浮かれて
互いの偶然を抱きしめては
冷えたグラスを傾ける
ポケットの中の
むき出しの札を握りしめれば
唐突に溶ける角氷の音
僕らの胸は熱い
安物の思い出はない
 
前へ前へと飲み進もう
魔法のカウンターに頬杖つけば
さみしい女がしがみつく
 
時計の針が夜を渡る
僕らは優しい風になる
時には誰かの真似をして
流れる雲のふりもして
人生は潔く短い
ああ 別れの時だ
 
 

 
 
詩集に戻る