先に呆けた者の勝ちではあっても     2000/02/13
   
 
人の名前や花の名前、地名などが覚えられなくなってきたなと自覚して、歳はとりたくないものだなと思っていました。
そしたら、テレビが興味深い番組を流していたのです。
以下は、その内容の要約です。
 
>痴呆の本当の原因で多いのは、何かがわかってきた。
>それは、脳の廃用性萎縮。
>アルツハイマーなど、病的な原因の痴呆は、全体の10%程度でしかない。
>廃用性萎縮とは、わかりやすくいうと、頭を使わないことによるボケ。
>こうした若年性痴呆は、働き盛りの40代にもみられる。
>ばりばり仕事をこなしているようでも、同じことばかり繰り返している状態では、脳は使われていないから。
>知的作業であっても、パターン化した仕事の繰り返しに陥ってしまっていたら、それは単純作業と同じことだと。
>だから、鼻歌まじりに仕事ができるタイプは、かえって、結果的に、普段からほとんど脳を使っていないおそれがある。
>刺激を与えていないと、若くても呆けてしまうのだと。
 
その話には、僕にも思い当たるふしがありました。
大体みんな、30歳から40歳になるあいだに、メモを付けるようになるのです。
まわりのおじさんたちに、「そんなものを付けてるから覚えられなくなっていくんですよ」と笑っていたのに。
紙に書いたスケジュール表を見ながらでないと、何か忘れてるみたいで、もう自分に不安で。
ふと思い付いたアイデアなども、その場でメモしておかないと、二度と思い出せなかったりしますから。
 
職場で密かに語り伝えられているおそろしい伝説も、いくつか聞きました。
我が社の先輩たちで、人に知られた読書家だった某氏も、自他共に認められていた某切れ者も、退職してほどなく、みんな見事に呆けていったというのです。
退職して、おそらくは、ああ、もうこれでゆっくりできるんだと、そう思ってしまったのでしょう。
 
僕も考えることは嫌いじゃないけど、夢中で考え続けていると、あとに相当な疲労感が残ります。
できることなら何も考えないでいたいし、休みの日など、ぼーっとして過ごすのは至福の時間帯でもあります。
退職したら、何も考えることなく、こころ穏やかに、悠々自適……。
よく理解できます。
でも、脳も、実は筋肉と同じだったのです。
使い続ける必要があるのは、足腰だけではなかったのです。
トレーニングを続けないと、衰えてしまうものだったとは。
 
 
                                 ムッシュ
 
 


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