胸を打つ弔辞ってありますよね  2007/08/11
(後編)
 
 
 僕はドラマを観ないから詳しくないのですが、「東京サンシャインボーイズ」という劇団出身の俳優、伊藤俊人さんが40歳という若さで亡くなられたときの葬儀では、テレビ、劇団関係者、学生時代の友人など、いろんな人たちが弔辞を捧げたと、秋元康氏が書いていました。
 
 
「伊藤くんは明るく楽しいことが好きだったので、暗くめそめそしたお葬式はやめにしましょう」
 葬儀委員長である三谷幸喜氏の発案で、告別式は一風変わったものになったと。
 弔辞では、思わずくすりと笑ってしまうようなエピソードが次々に紹介され、弔問客はみなさん泣いておられるのに、時折り、吹き出してしまうという光景すらみられたとのこと。
 でも、そうしたことによって、伊藤俊人という俳優さんの知られざる人柄を垣間見ることができ、その人となりをあらためて共有することが出来たのでしょう。
「あんなに素敵な告別式は見たことがなかった」というのが秋元さんの感想。
 
その時の、葬儀委員長、三谷幸喜さんの言葉は、
「人間は2回死にます。1回は肉体的な死。そして、もう1回は友人たちがその人のことを語らなくなった時です。僕たちは君のことを語り続けます」
 
 
 
 大切な友が亡くなったとき…。
 その昔、独身寮で頻繁に徹夜麻雀を打っていたベストメンバー4人組は、全員が同期生でした。その時々で勝ち負けはあったけど、年間トータルしたら、手品を見るようにプラスマイナスゼロになってた。独身寮では4人とも勝ちまくってたわけですが、対戦者がこの4人になってる成績表だけを集計してみた人がいて、報告してくれたんです。
 その中で、ニヤリと笑って手牌を倒すと役満、というおそろしい男が、30歳過ぎで突然亡くなりました。世界でも数人しか症例がないという病気だといわれて。
 僕らは、弔辞を頼まれるでもなく、ただ参列しただけで、彼になんにもしてやれなかった。
 参列者たちの中にまぎれて、「おかしい。昼まで元気に仕事をしてたんだ。ちょっと(病院に)行ってくるといって帰って、気が付いたら全身チューブに繋がれてたんだ。医療ミスじゃないのか」という怒りの声を聞きながら。
 ああ…。
 慙愧に耐えません。
 でも、そう。
 彼のことは語り続けますとも。
 
「人間は2回死にます。1回は肉体的な死。そして、もう1回は友人たちがその人のことを語らなくなった時です。僕たちは君のことを語り続けます」
 
 大切な友が亡くなったとき、僕は、三谷幸喜氏のこの言葉を、参列の皆さんと共に、ぜひ亡き友に捧げたい、と思います。
 だから、忘れないうちに、早めに誰か…。
 そこの、ほら、あんた。
 
 

 
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