中学生の悪童たちは、期末試験などのシーズンになると、お昼で学校が終わったりすると、工場を経営している同級生の家に集まっては、工員のお兄さんたちの卓球台を借りて遊んだり、応接間の大理石のテーブルに置いてある、来客用のタバコを興味本位でふかしてみたりしていました。 そしてある時、まるで重大な秘密を打ち明けるように、クラスで誰が好きかを告白しあったことがあります。 経験のある人は、簡単にわかると思います。 みんな、おんなじ女の子の名前をあげましたよ。まだ、子供でしたから。 高校生になると、悪童たちの好きになるタイプが、その幅がどんどん広がっていきました。子供から大人になる、その過程そのままに。 外見は関係ないとは言いませんが、誤解を恐れずに言えば、大人の男たちは女性のことを、外見では好きになったりはしないと思います。 「出会ったときに、一目見てビビッと来た」 そんなことをテレビで発言してた人もいましたが、僕としては、普通、ちょっと考えにくい現象だと思いますが、どうなんでしょうか。 お見合いしたとき、それが10回目だかのチャレンジだったはずの妻は、僕と会ったとき、「ああ、わたしはこの人と結婚する運命にある」と、強くそう感じたといってました。女性の場合は、そういうこともあるのでしょうか。残念ながら男なものでわかりませんが。 大学の事務局にいたとき、何気なく僕がひとりの女学生のことをほめたとき、すぐ近くにいた女性サイエンティストの助教授が、この人は凄い美人ですが、 「でも無坂さん、あの子は馬鹿ですよ。馬鹿な子はつまんないでしょ」 カチンと来ましたね。 「聡明な女性とは、話してて楽しいけど、馬鹿な女の子は可愛いですから」 (彼女が持っていてあなたが持ってないものもあるんですよ) そう言ってやったつもりです。 美人や聡明な女性の中には、これはその人を取り巻く周囲の責任も小さくないわけですが、性格的に好きになれない人がいます。 そういう傾向があるとまではいいたくないけど。もちろん一般論でもなんでもなく、そういう人もいるというだけの話に過ぎませんが。 白状すると、僕は変に自信家だった時間が長く、冷静に振り返れば、性格的にずいぶん嫌な奴でしたし。 このままだと、いかにも牽強附会な論法で公正でない気もするから付け加えると、その大学で就職の世話をしていた教授が、あるとき、ため息混じりにこぼした言葉があります。 「無坂さん。女の子はやっぱり顔なのかなぁ」 聞けば、ある会社に学生をふたり推薦したらしいのですが、成績も性格もよくて誰が見ても上位の女の子の方が落ちて、ダメなんだけどちょっと可愛い子の方が受かったとのこと。そして、そういう傾向は、どうも、その会社だけじゃなかったらしいのです。 そんなとき、テレビで、リクルート整形という言葉を聞きました。 まあ、世の中もいろいろだということでしょうか。 僕も、偽善家といわれたくないから白状しますが、高校生のとき、夏休みに教室に行くと、家では勉強に集中できない同級生たちが4、5人来てて、その中に、悪いのが鞄の中に週刊平凡パンチのピンナップを山ほど持ってきていました。僕が一枚を選んで黒板に貼りましたよ。それを拝みながら、みんながんばって勉強しました。 もちろん、その時選んだ一枚は、確かに美人でした。 でも、ピンナップ写真ですから。美人のお姉さんたちのしかなかった気がする。ということで、なんと言い訳しようと、写真の場合のようにその他の要素が全く排除された状態では、必ずしも美人が嫌いなわけじゃない。 ただ、こんなこともありましたよ 僕の仕事は、基本的には自分の才能を売るスタイルですから、横に並んで座っている同僚とは、本来は関係ないわけです。そんなことは、我が社の人間なら誰だってわかっているはずの、常識的なルールのはずでした。でも、ある日、若い女の子が僕に言うわけです。この起案に付いて説明してください、と。 それは、僕の隣に座っているおじさんが作成した書類です。形式的に僕もハンコを押しましたが、詳しい説明を求められてもわかりませんよ。 「疑問があるなら、起案者に聞いてよ」 そういうと、 「でも、無坂さんも承認のハンコを押されてますよ」 参りましたよ。 彼女の主張は形式的には筋がとおっています。でも、我が社のルールでは認められません。我が社の、古いルールでは、ね。 その話をすると、みんな笑います。 理由は、彼女が入社2年目だということ。 それと、美人。 美人は、自信家。気が強い。寄らば切るぞ。 多分、いつもみんなから大目に見られ、落ち込むこともなく、かつての僕みたいに不当に自信も持って、温かく育てられているのでしょう。あとは、彼女自身が、いつ、自分のダメダメさ加減に気付くかだけ。 社会は、冷静に見て、美人優遇の傾向はありますよ。否定はしません。 でもね、僕がボトルを置いていたスナックは、3カ所あって、そのいずれも、可愛い女の子はいません。 どのお店もママさんが個性的で、大人の話が出来る、そんなお店でしたよ。 男とか女とかじゃなく、外見なんて意識させない友人に対してこそ、僕は大きな魅力を感じますね。 とはいえ、外見がどうだっていいとは思いません。 自分のファッションに気を遣うのは、僕に好感を持ってくださっている相手に対する礼儀だと思ってます。 |