霧の伊吹山      1999/07/10
 
 
名神高速の関ヶ原インターを降りるまでは問題はありませんでした。
そこから伊吹山ドライブウェーに入るのも、本当は簡単なことだったのです。
僕の前に2台並んだ観光バスさえいなかったら。
せっかく僕が、インターを降りて正しく左折しようと思っているのに、2台が2台とも右折して行くんだもの。そりゃあ、つられますよ。
おかげで余計な時間をとられましたが、それでも、岡山を6時に出て、10時には伊吹山ドライブウェーに入っていました。
 
 
車で登りながら見上げると、遙か彼方に、厳かに霧に包まれた玲瓏の峰がそびえ立っています。
「あれは伊吹山じゃないよな」
だって、僕らが登り始めている山とは、峰が2つくらい違うんですから。
「うん、あれは遠すぎる」
妻も同意見でした。
あまりにも遙か彼方であり、その姿に威厳がありすぎました。
ところが、なんと。
「あれっ、もしかして……」
「おお、やっぱり、凄え」
空中高くそびえる大自然の要塞のように見えたその山こそ、実は、伊吹山なのでした。
どんどん車を走らせていくにつれて、それと確信したときの喜びを察してください。
 
インターネットでの事前調査では、現在では山頂まで車で行けるとのことでした。「わたしたちは地元ですから、登山道を、麓から4時間かけて登りますが」とも。
そう書いてあったから、信じてたのに。
現実は少し違って、山頂の駐車場とやらから本当の山頂まで、30分くらいかけて、ゆっくりと、高山植物の写真など撮りながら登らなければなりません。
山頂は確かにそこに、手を伸ばせばすぐに届く感じで見えているんですが、頂上付近でうごめいている人間たちの小さいこと。昔、富士山に登ったとき、見えている山頂の景色が、登っても登っても近くならなかったことを思い出してしまいましたよ。
でも、山は山です。
さだめのままに、誠実に、人間たちを受け入れてくれます。
日ごろの運動不足を思い知らされながらも、心の底から堪能しました。
泣きながら、笑えます。
天保山の「海遊館」も素晴らしかったけど、ここ「伊吹山」も、一度は訪れねばならぬ場所と心得ておいてほしいです。
おなじみの高山植物はゆうに及ばず、珍しいところでは、深いブルーが妖しいイブキトリカブトや、あとは……えーっと。
とにかく、山に詳しそうな老夫婦の会話など盗み聞いたところでは、まだこれから夏にかけてますますお花畑がにぎやかになっていくらしい気配でした。
「もう少ししたら、また5時に出てこよう」と話してましたよ。
どこの人たちなんでしょうね。
僕らより1時間早く出発されたようですが、到着も、どうも僕らより1時間くらい早かったご様子。気になりました。
ともあれ、僕らは僕らで調子に乗って、麓から徒歩で登る本来の山道を、その素晴らしい景観に惹かれるままに少し下ってみたり、また頂上に戻ってから駐車場までの帰り道は、わざと行程1時間の迂回ルートを辿ったりして、久しぶりの山歩きを楽しみました。
 
でもね、ものすごい人でした。
僕らが駐車場から立ち去ったのは午後1時30分過ぎでしたが、その時点で駐車場はほぼ満車。それなのに、山を下っていると10台くらいの観光バスとすれ違ったし、マイカーは数え切れないくらい。
まったく、早起きな鳥は虫をつかむです。
 
 
せっかくだから琵琶湖を見ようと、米原から彦根に回りました。
淡水湖なのに、琵琶湖は歌に詠われたとおり、うみの顔。
消波ブロックが並んでいる辺りは、かすかに海の浜辺と同じ匂いがしたのは驚きでした。
潮の香りだと思っていたのは、水生植物か貝類の匂いだったのでしょうか。
「あーっ!」
妻が叫声を発した原因は、テレビで見た「鳥人間コンテスト」のランチャー台。
3、4人が翼の部品のような板を上に運んでいました。
いま思うと、あれ、台の修理をしていたのかも。今年の夏も、やる気でしょうかね。
 
そのあとは、京都で高速を降りて、銀閣寺と清水寺に立ち寄りました。
本当は、妻も僕も清水寺に行ったことがなく、本命はそこだったのです。
それなのに、地図を見ながらチャレンジしたものの、見事に失敗。やむをえず、途中で案内版が目に入った銀閣寺でお茶を濁そうと。
ところが、たどり着いてみれば、銀閣寺はお休み。(しかし、お寺が仕事を休むか?!)
でもまあ、転んでもタダでは起きぬ。
銀閣寺近くのお店に置いてあった手書きの地図で、清水寺をチェック。
ラッキーでした。
念願の清水寺で、こっそりお願いもしたし。 v(^.^)
 
 
                                 ムッシュ
 


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