飲むべきか飲まざるべきかではなく    2002/08/31
 
 
 いつの間にか、飲酒運転の罰則が怖ろしいくらいに重くなっていると知りました。
 ドライバーの責任の重大さからすれば当然だと、そう思っている人も多いようです。飲酒運転が原因と思われる悲惨な人身事故の映像など見せられれば、やむを得ないことかもしれません。
 でも、実は少し疑問があります。
 罰則が重いわりには、飲酒運転かどうかの基準が曖昧なままになっているように感じます。
 体重が何キロの人は、ビールの大瓶1本飲むと、何時間後にはどうやらで、何時間しか経ってない場合はどうやらです、などと。
 そしてそうした話の最後には、しかしこれらはあくまでも目安であって、お巡りさんに調べられて黒といわれたら黒になるので気を付けてくださいと、そういう仕掛けになっているわけです。
 厳しい罰則は、とんでもない不埒者から市民の皆さんを守るための制裁基準です。大丈夫ですとも。アルコール摂取と休憩時間との目安に基づいて、日ごろから節度ある飲酒に心掛けておられる善良な一般市民の皆さんは何も心配いりませんよ。
 なんとなく、そういう話かなと思っていたら、いざというときには、目安は実は何の役にも立たない。
 
 お酒を飲む機会の多くは夜です。朝湯朝酒が大好きだったという方もおられますが、宴が始まるのは普通は夕方からとしたものです。しかも、そういう席では、マイペースで飲めるときばかりではありません。仕事の場合だってあるでしょう。これはまずいお酒になります。だがしかし、それが仕事である以上、欲しくなくても飲んで、座を盛り上げなければならないのはサラリーマンの悲しい性。
 心を許した友人たちと飲むときはまた、それはそれで気持ちのいい酔いに包まれ、明日のことなど考えることなく盃を重ねるということも珍しくないでしょう。
 かくして、いずれの場合にせよ、次の日の朝、待っているものがあります。
 
 多分、12月の朝など、通勤途上のすべてのドライバーをアルコール検知器にかけると、相当数の人たちが飲酒運転と判定されることでしょう。
 そういう現実があるということを、程度の差こそあれ、みんな感じているはずです。そのことをみんなが分かっているとしたら、当然警察の人たちも分かっているはずであり、だとしたら、警察は、朝はそれをお目こぼししているようにも見えます。飲酒機会の多いシーズンには、深夜ともなれば街のあちこちで取り締まりをやってますが、朝は、あまりやってませんから。
 では朝はよいのかというと、そうでもありません。事故を起こすと、たとえ朝だろうと、アルコールが検知されれば飲酒運転に問われます。
 
 はっきりいって、たくさんお酒を召し上がるお父さんたちは、翌日の昼過ぎまで匂ってます。でも、前夜に深酒をしたからといって、そんな理由で会社を休むわけには行きません。
 若いころは、お酒の強いおじさんたちに無理矢理飲まされては、いざ帰ろうというときになると、きまって鬼軍曹が注意を与えてたものです。
「いいか、お前たち。一人暮らしの者は、今日はもう風呂には入るな。火事になると危ないからな。そしてみんな、今日は楽しかったが、明日はいくら辛くても、這ってでも出てくること。遅刻するんじゃないぞ」
 それがサラリーマンの心得のようでした。僕はよく休んでましたが。
 つまり、普通は、前夜の余韻を漂わせながら、みんな出勤していきますよ。
 だから飲酒運転を認めなさいと主張しているのではありません。自分が車を運転する以外の方法で出勤すればいいわけですから。
 ビール何本飲んだら、何時間は運転してはいけないなどという、曖昧な基準しかない状況について疑問に思っているのです。しかも、アルコールの分解速度には個人差があるということですから。そして、いくら時間が経っていても、不運にしてアルコール検知器に引っかかったらアウトですから。
 
 しばしば、前置きが長いと叱られることが多いので、結論を急ぎましょう。
 要するに、僕ら自身が手軽にアルコール検知器を使えるようにしてほしいのです。つまり、車に乗る前に、それでチェックして、大丈夫だなと確認できるように。
 とりあえず必要があるからと運転していて、その途中で捕まえて検知器にかけて、「はい、残念でしたね」はちょっと納得できない気がするのです。
 どこの家庭にも体温計くらいあるように、お父さんお母さんがお酒を飲む家庭には、飲酒計みたいなのを一家に1本。もちろん、リーズナブルなお値段で。何でしたら、コンビニにも置いて。あ、飲み会で、乾杯程度に飲んであとは烏龍茶という場合もありますから、居酒屋にも置いて支払い時にレジのところでサービスでチェック出来るようにもして。
 
 誤解しないで欲しいのですが、確信犯の飲酒運転など養護する気持ちは更々ありませんよ。車を運転する人は、ひとつ間違えたら人の命を奪いかねませんから、それだけ重い責任があるということは当然ですし。
 要するに、厳重に取り締まりたいなら、僕らが自分が置かれている状況が明確に把握できて、ルールを守りやすいような環境を整えるよう配慮していただきたいのです。重い罰則で恫喝し、善良な酒飲みをいじめるのが目的ではないでしょうから。
 『乗るなら飲むな』ではなく、『吹いてから乗れ』といってほしい。
 
 

 僕は運転歴30年以上ですが、いままで飲酒運転で警察のお世話になったことは一度もありませんので、念のため。
 
 

 
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