南イタリア料理レストラン事件の謎    2003/05/10
 
 
親しい仲間と食事をする約束をしました。
場所は、南イタリア料理のレストラン。
集合は、某ローカル駅に18時。
さて、わくわくしながら駅に着いたと思ってください。
しかぁ〜し、18時近くなっても、誰も現れません。
でも、大丈夫。
僕にはエッジ(PHS)があります。
迎えに来る約束の人に連絡を取ろうと悠然とポケットからエッジを取り出すと…。
どきっ!
画面が暗いぞ。
なぜだ。
頭脳明晰な僕はすぐに気がつきました。
故障じゃ。
しかし、よりによって、なんで、こんなときに。
これも、やはりマーフィーの法則のせいか。
さらに、ふと、もうひとつの可能性にも気が付きました。
もしかして、これがいわゆる電池切れじゃないのか。
そういえば、昨夜は充電していません。
ただ、普段から、必ずしも毎晩充電器にセットしているわけじゃありません。
一日おきか、二日おき。
いままでは、それで十分だったのに。
いや、それがいけなかったのか。
十分じゃなかったのかも。
そうした過酷な使い方が、充電器の寿命を縮めてしまったのか。
   
激しい悔恨の念にくれても、仲間の姿は見えません。
本当に今日だったのか…。
時間は間違えてないか。
待ち合わせ場所は、この駅でよかったよな…。
さまざまな妄想が不安を呼び、もう少しで泣きそうになっていると、やっと来ましたよ。
「連絡しようと何回も電話を入れたのに、繋がらなかったんですよ」
そういわれて、僕は息のないエッジを彼に示しました。
気がつかない間に、こんな状態になっていたこと。
時間になっても現れないので、こっちも連絡を取ろうとして、それではじめてエッジの異変に気付いたことなどを説明しました。
「なんだ、それじゃ電池切れですよ」
やはり、そうか…。
 
まあ、それでも、ほどなくメンバーがそろい、南イタリア料理のレストランで、楽しいディナーをいただきましたよ。
忘れずに、僕のオリジナルフォークソングのCD「風の言葉」も押し付けて。
(興味がある方は、住所氏名を明記して、当サイトあてにメールでご請求ください。当方の事情の許す限り対応いたします。)
 
愉快な酔いに包まれて帰宅し、早速充電開始。
そして、意外な速さで充電完了。
しかぁ〜し、ん…?
画面は依然として暗いままです。
むむっ、やはり故障であったか。
まだ保証期間内だよな、保証書は捨ててないかなぁ…。
そんなことを考えつつ、心地よい酔いはどこへやら。
不愉快な気分に打ち負かされ、風呂上りの娘に、
「ほら、充電しても、これだよ」
不愉快の原因を見せると、裏のバッテリーを外して付け直そうとするから、
「そんなことは何回もやってみたよ」
そういって機先を制したら、しばらく考えていたけど、ふと、無言で、電源を入れる操作を始めながらニヤリとしました。
おいおい、ワトスンくん、まさか…。
どっひゃー!
ギャビィーン!
「電池切れで、電源が自動的にOFF状態になってたのかな」
それが娘の推理でした。
試しにONにする操作をしてみたら…!
そう、それでめでたく復活です。
さすがワトスンくん。
 
 
しかし、この話はこのままでは終わりません。
翌朝、さえた頭で目覚めた時、重大な記憶がよみがえったのでした。
事件前日の夕方、仕事を終えた僕は、岡山駅近くの耳鼻科を訪れていました。
順番を待っていると、壁の張り紙が目に入りました。
「診療機器の誤作動を招く場合がありますから、恐れ入りますが携帯電話の電源はお切りください」
もちろん僕のは携帯電話じゃなくPHS、いわゆるエッジです。
どこかの総合病院では、携帯の電源を切ってくれという張り紙の横に、
「医師が使っているのは携帯電話ではなくPHSです」
というお断りがありました。
つまり、エッジは周波数帯が違うから、一般的には電源を落とす必要はないのです。
だけど僕は考えました。
診察途中で、突然、もしもこいつが陽気に「自転車に乗って」を奏で始めたら…と。
余計な誤解を受けぬためにも、ここは電源を切っておくのが大人としての正しい態度かな。
 
すばらしい。
そこまでは、すばらしい判断でした。
ただ、そのまま、自分がそうして電源を切ったことを忘れ去りさえしなければ。
……。
原因は、故障でも、電池切れでもありませんでした。
単に、僕が電源をOFFにしていただけのことだったのです。
名探偵こそが、犯人だったのです。
おそろしい…。
 
 
 

 
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