マンチーが幸せな理由    2005/10/06
 
 
 こんな本がありました。
 「いつだって犬が幸せな理由」  アラン・コーエン
   〜犬のマンチーから教わる38の心のレッスン〜(KKベストセラーズ発行)
 
 いや、猫派の僕は、タイトルを見ただけで、もううんざり。
 そりゃあ、人間に尻尾を振ってゴマをすり、ご主人様のご機嫌を伺いながらでも日々の餌に困らなければそれで幸せと思えるなら、そんな飼い犬の生活を気ままで優雅だと感じていられるなら、この本に学んで、さっさと幸せになればいいよ、と思いましたよ。
 それで、ふと、試しに一丁この本を読んで、久しぶりにとびっきりの不機嫌を体感してみるのも一興かなと、そんないたずら心を起こしたのでした。
 
 でも、ちがいましたよ。そんな単純な話じゃなかった、内容は、さまざまな角度からの教訓に満ちていました。
 ただ、この本に出てくるマンチーという犬、こやつは実は犬というよりは、どちらかというと猫に近いDNAを持っているようなのです。鎖につながれた従順な犬ではなく、猫のように自由奔放な存在なのです。
 つまり、よく見かけるタイプの犬好きの飼い主だったら、当然のことながら、マンチーの態度は、期待はずれだったりするし、ひどく疎まれたり、最悪の場合は保険所に連れて行かれる危険がありますよ。
 飼い犬は主を選べませんよ。そういう意味では、「気弱で寛大な飼い主に恵まれた幸運な犬マンチーの優雅な生活」というタイトルにすべきだったかもしれません。いや、素晴らしい。
 
「むやみやたらとキスをしよう」
 この辺の話は、読むまでもなく、なるほどいかにも犬らしいトピックだけど、心から犬らしいと思ったのはこれくらいかな。
「なつく前によく知ろう」
 このメッセージは少しは犬っぽいけど、でも、なつく前にお互いをもっとよく知っておけば‥‥、といった教訓は、いまさら教えられなくったって痛いほど骨身にしみてわかっとるわい、とお嘆きの向きは多いのでは。
 それに、初対面の犬は時間をかけてクンクンしあうというけど、ポンと餌を投げてやったら、そのとたんにうれしそうに抱きついてきて顔をペロペロ舐め始める印象がありますよ。あれはどうなの? 用心深さ、警戒心といったものは、むしろ猫の方が強いと思うけどな。
 
 結論として、人生の教訓めいた話を犬になぞらえ、面白おかしくまとめて本にしてひとやま当てようとしたら、最終的に猫の行動パターンに近付いてしまったというおそまつ?
 
 いや、ちがうな。
 一般論としての犬じゃなく、マンチーという一匹の哲学者犬がいて、大衆受けするようにひょうきんで間抜け顔のキャラクターとして、これが彼のスタイルだと称して、僕らの忘れているものを思い出させてくれようとしてるのかな。
 本当、頭のよい人たちがチームを組んで、企画を練り、ベストセラーを狙って満を持して放った絵本! みたいな感じがあります。
 でもまあ、おもしろい。いい本だと思いましたよ。
 定価千円+税だけど、ブック・オフ価格300円(税込み)。すごく得した気分。
 
 
 
「‥‥骨がほしいという欲望は、かなえられないまま潜在意識に残ってしまった、幼いころの思いから来るのだろうか?」
 なんて心配したりしない。
 自分が実在しているのかそれともこれは夢なのか、などと考えあぐねてまんじりともしない、なんてこともない。自分がここにいる、というだけで十分なのだ。
 
 マンチーは、犬(DOG)が、神(GOD)の裏返しだと知っている。
 マンチーは悟りを得ている。
 
    (以上は、「自分を信じよう」からの抜粋です。)
 
 
 あ、この部分を使いたいために、主役が猫じゃだめで、どうしても犬にする必要があったのかな。
 でも、ほら、話を蒸し返して悪いけど、主人公のマンチーってやつ、やっぱり、本質的には猫タイプだと思いません?
 

 
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