娘よ    2003/10/16
 
 
友とするには、何回もいうけど、僕は断然、誰が何といっても、猫です。
何回もいうように、犬は家来。まれには、その点を勘違いしてる犬もいますが、そんな場合は、人間の都合の良いように仕立て直す「躾」というものが待ってます。
かくして、犬との間には上下関係というものが横たわることになります。
規律正しく平穏ではあっても、いつかその物足りなさに気付き、楽しい日課であったはずの散歩を、人任せにしてしまうようになるかも知れません。
付き合うなら、だから、猫です。
ヤツらは屋根を越え塀をわたり、いつも超然として孤高を保っています。人間とは対等ですから、媚びません。
 
ところで、娘がお年頃を迎えました。
青年男子諸君、落としごろです。
そこで気が付きました。
最愛の娘の幸せを考えた場合、彼女の夫としては、猫がよいのか、犬がよいのか、と。
 
僕としては、食事に同席したりして話をするシーンのことなど考えると、多趣味でものしりな猫タイプの方が愉快そうな気がするけど、娘の相棒として慎ましく安定した家庭を築いてもらうには、実直な犬タイプを勧めたい気がしてしまうのです。
 
そして、娘は、子供のころから犬を飼いたがっていました。これは好都合です。犬はいいぞ、娘よ。
先日も、おなじみのローン会社のテレビコマーシャルを観ながらいってました。
「おとうさん、犬、飼おうよ」
「そんなこといっても、おまえ、散歩に連れていけないだろう」
というのは、彼女は、朝は絶望的に弱く、少し早起きして犬と散歩に行くなんて不可能なタイプだからです。しかも、多彩な彼女にとっては夜は貴重な時間帯であり、バスケットボールにアカペラコーラス、ジャズと、極めておいそが氏ですから。
「わたしが飼うんじゃなくて、みんなで飼うの」
なるほど、家族全体で飼うのか、そうか。
しかし、僕にはその発言が、餌はお母さんの担当で、散歩はお父さんの担当…と聞こえてしまいましたよ。
そうなるともう、笑ってごまかすしかありませんでした。
 
だけど、その瞬間、僕は心の中で呟いていました。
そうとも、娘よ。
選ぶなら犬だぞ、と。
 
 
 

 
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