悩める親たちへ    2003/01/30
 
 
 部屋を片付けていたら、古いメモが出てきました。
「文章の書き方」の話をするための、ちょっとした資料です。
 部屋を片付けるためには、必要なものとそうでないものを整理して、少しものを減らさねばなりません。そのため、出てくるもの出てくるものに、ひととおり目を通していました。
 そんななかに、畑正憲氏の話に関するメモがあったのです。
 
 氏によると、いろんな人から、ペットの育て方について相談が来るのだそうです。
「この子は幸せじゃないんじゃないでしょうか」
「こんな育て方をしていていいんでしょうか」等々……。
そんなとき、ムツゴロウ氏は、いつもこう答えるのだそうです。
 
   動物は、一匹一匹みな違います。
   だから、『こんなときは、こう』という、決まった育て方なんかないんです。
   そんなことはいちいち気にしないで、裸でぶつかり合うことが大切です、と。
 
 そして、文章を書くのも、同じことがいえます。一応技術的なことはありますが、そうしたテクニックを熟知して、上手な文章を書けば、それで読む人を感動させられるかといえばそんなことはありません。無骨でも、たどたどしくても、そこに訴えるものがあり、気持ちが率直にぶつけられていたら、その方が何倍もパワフルな文章として読む人の心に響くことだってあります。
 
 とまあ、そんなふうに、話を誘導するための、ひとつの前振りネタです。
 埃の中から出てきたその資料を読み返しながら、今日的な話題としては、文章の書き方などという遠い目標に向けての婉曲な比喩でなく、もっとストレートに、子育てについての助言として耳を傾ける必要があるのではないかと思い至り、いまこうしてキーを叩いている次第です。
 プロ野球も、まもなく春のキャンプが始まります。
 そこでは、叩いて叩いて、こっぴどく鞭を入れなければ伸びない選手もいれば、優しく誉めておだてた方が伸びる選手もいます。一人ひとり、みな違いますから。そんなことは、プロスポーツの世界では常識です。
 だとすれば、子供も同じでしょう。
 野球にも子育てにも、「こういう場面ではこれ!」という、決まった方程式など本当はないんだと思います。気取った育児評論家や、教育評論家の本に騙されてはいけません。
 未熟なら未熟な親として、真剣に、裸でぶつかり合うのが一番だと思うのです。
 
 
 では、僕は親としてどうだったか……。
 それはA王子とM姫に聞いてください。
 
 
 

 
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