転がる少年    2007/01/01
 
 
 かつての上司で、激務のなか脳梗塞に見舞われ、半身不随となられた先輩が、リハビリを積まれ、いまは改造車で四国巡礼の旅をしておられます。いまは3周目か4周目かの途中のはず。信心をとおしてご自身の人生を見つめなおしておられるのでしょう。その方から、時折り手紙が届きます。
 そんな旅先からの便りに、あるとき、いつも僕のCD(ローリング・ボーイ)を鳴らしながら走っていると書いてありました。そして、風に吹かれて転がってゆく…という歌を聴きながら旅をしていると、なにかしら自分も道端に転がっている石ころのように思え、さみしい気分になるんだ、といった意味のことが感想として綴られていました。こうして野の果てに転がっていって、のたれ死んでしまうのか…みたいな。
 
 すぐさま僕は、「ローリング・ストーンズって、ご存知ですよね」と返事を書きました。
 CDのパッケージを見てもらってもわかりますが、「動かない花になるな、転がる石になれ」というイギリスの古いことわざの、まさに石のように転がる少年です。転がり続ける、ロックの魂みたいなイメージを頭に置いて書いた、もっと積極的に、もっと行動的に生きようという、そういう歌ですから、と。弱気になられてるように感じたから、およばずながら、元気付けるつもりで。
 
 いま僕は、別の意味を嗅ぎ取っています。
 転がり続けるということは…、野分に吹かれ、転がっていくということは、どちらかというと、種田山頭火の風景が頭をよぎります。
 
 いずれにしても、前を向いて、ときには横へも斜めへも、ごろごろと自由気ままに転がり続けていくつもりです。
 今年もどうぞよろしく。
 
 
 
 

 
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