アートする心の不思議    2002/06/30
 
 
自慢する訳じゃないけど、高校の時、もりたじゅんと僕は、先生に絵をズタズタにされてました。
先生の筆が、僕のパレットの上で僕とは違う色を作り、僕のキャンバスの上を走ります。その間、時々「なっ」と言葉少なに振り返り、簡単な説明が入るだけ。
いつしか、「はい」と小さくつぶやく僕の頬を、冷えた涙が伝います。
 
例えば、絵を見てほしいと言われることがあります。
教えるなどというと偉そうに聞こえますが、一応見るだけ見て、才能があるなと思う人には、意見ひとつ言うにも、つい力が入ります。
そういう場合は、ある程度高いところの話になりますから、人によっては辛辣な感じを受けるかもしれません。
でも、そう思われても仕方ありません。
いいところは率直にいいと認めるけど、ダメなとこはダメなんですから。
厳しい話になりますが、こういうことは、どんな世界でもあることでしょう。おなじだと思います。
僕の場合は、他人の絵をズタズタにはしませんが、新聞紙の切れ端など身近にある物を使って、絵のポイントに置いて見せたりして、その劇的な変化を実感させてあげます。
少し、やさしい。
 
最近は、自分ではあまり歌は書かなくなったのに、インディーズレーベルやアマ自主制作CDなど、たまたま色々な曲にふれる機会があって、絵とおんなじ気分で勝手な感想を口走らせてもらっています。
そして、そんなときは、お約束どおりシビアな口調になりがち。
もちろん、邪心などありません。批判的な部分があったとしても、それは真実、惜しいなあという気持ちを抱いてのことですから。
でもね、あとでそんな無遠慮な感想を整理しているとき、ふと、心が立ち止まることがあります。
おいおい、それ、嫉妬じゃないのか、と。
 
辛辣な感想を連ねたのも、本心から惜しいと思ったからだったはずなのに、歌というのは不思議です。何回か聴き込んでいってるうちに、こっちが魔法にかかり、気分逆転、良くなってくることがあるのです。
こういうのは困ります。
何だ、惜しいと思ってたはずなのに、結構いいじゃないか、となってしまうのですから。
 
やはり、嫉妬か?
 
 

 
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