底なしの凋落傾向にあった相撲界に、ちょっとした異変が起きていますよ。 その名は高見盛。 世の文化人たちは、高見盛関を人類の中の絶滅危惧種のように論評して人気を増幅させていますが、僕から見たら、彼のようなタイプは、世の中には結構生息しています。新聞やテレビ関係者のような、頭脳が切れる必要のある業界周辺では生き残れないかもしれませんが、市井を見渡せば、彼のようなタイプはさほど珍しくもありません。 そして、僕にとっては、比較的苦手なタイプでもあります。 元来、機転が利かず、無骨ですから、仕事で組むと苦労するのです。 その人が人見知りする傾向がある場合は、こちらからグイグイとリードしてあげなければなりません。最初はおどおどして、不安の塊ですから。そして、当座は、こっちが苦労しながら育てることになります。一定の学習を終えて気持ちが落ち着いてくると、今度は自分の頭で考えるようになり、それはいいんだけど、自分なりに一つの結論に達すると、以後、周囲のアドバイスに対して聞く耳を持たなくなる傾向があるからしんどいのです。これが、昨日までのあの馬鹿と同じ人間かと思うくらい、頑なになっちまいます。 そういうのは、人間としてのスタンスとしては、あながち悪くはないのでしょう。人生のこと全てにおいて、基本的には、自分で考え、自分で判断すべきですから。その辺も、真面目さゆえの変貌なのかもしれません。 ただ、仕事で組んだ場合の仲間としては、これは手に余ります。このタイプは、一度考えが固まってしまうと、僕の経験では、ほとんど説得は不可能だからです。 元々、話し合いということは得意ではない種です。 話が微妙な問題を含んでいるような場合、そのことの重要性について時間をかけて説明していると、微妙で微細な問題を、勝手に自分の中で、大まかで簡単な問題へと大胆に翻訳して理解してしまいます。 そうなると、もうお手上げです。 信じられないと思うかもしれませんが、真面目なだけに、頑固ですから。 でもまあ、そういう意味では、高見盛関は適切な職業を選択したといえます。ご同慶の至りです。相撲は、個人プレイですから。 誤解のないように付け加えておきますが、仕事では組みたくないけど、人間としては、僕は嫌いじゃありませんよ。だって、素朴で裏がない分、安心して付き合えますから。 う〜ん。しかし、一緒に飲んでて、おもしろい話は出てきそうにもないかな。いやいや、そうとばかりはいえないかも。 もっとも、確実に楽しい会話を楽しめるのは、切れるタイプで、ちょっとくらい悪いくらいの奴ですよね。朝青龍なんか、いくらでも脂っこい引き出しを持ってそうじゃないですか。 ただ、むずかしいです。 僕には嫁入り前の娘がいますが、彼女の夫として、朝青龍のようなタイプと、高見盛のようなタイプと、父としてどっちを望むか…。(どっちを父が望もうと、関係ないんですけどね。) 男同士の友情を温める場合の話と、波穏やかなることを望む家庭の話と、比べるほうがどうかしてますか。 どうかしてますかね、はは…。 じゃ、今日のところは、人間的に強さともろさが同居している魁皇タイプということで、どうかひとつ。 |