一人の男が、かつての上司であった某氏を気遣い遙々訪ねてきて、その席にお相伴しました。 気の置けない者ばかり、総勢4人。みんな、昔の仲間です。 国内であれば、どこだって数時間で行けるようになった今ですら、離ればなれになった友人との再会というのは、それでもやはり希有なことでしょう。 その気になればいつでも会えるはずが、現実には何かきっかけがないと、なかなか実現しません。 多忙な相手をおもんばかり、お互いに遠慮してしまうということもあるでしょう。 人と人とのつきあいには、たとえ夫婦の間であっても、一定の距離感というものが必要ですから。友人であればなおさらのこと。 それだけに、古い友人との再会はうれしい。 長い時間の河を飛び越えて、往時を懐かしみ、むさぼるように旧交を温めるのです。 遠来の客を迎えた某氏は、思いがけず楽しい時間を持てたことを喜び、同時に、こんな時間はもう再び持てないかも知れないと察し、その気持ちを、さりげなく歌に託しました。 僕らは誰もがそれに気付かないふりをして、ひたすら飲み、ひたすら歌い。 そのスナック(二次会)の掟というかルールによると、カラオケで777点を出すとボトルを1本サービスしてくれます。 1カ月前のとある夜、ぼくはここで5曲歌い2回777を出しており、その時の1曲の「全部抱きしめて」を再び歌いました。 結果は、まんまと777点。 つい浮かれてママに種をばらしたら、「以後あなたは全部抱きしめては禁止よ!」だって。 それでもめげずに2本目を狙って歌おうとすると、「これからは、同じグループは2回目からはビールだよ」との戒厳令布告。 勝手だなあ。 その直後に、遠来の友が見事に777をゲット。 手に入れたビールは、スナックの女の子が飲むんだけどね。 時計の針が零時を過ぎて、午前1時をまわっても、まるで学生のように陽気に飲んだくれ、せつなく気勢を上げ。 こんな心地よい宴は、ある意味、過去からの贈り物。 その昔、僕らはまだまだ未熟者だったと思うけど、でも、それなりにいい時代を過ごしたということでしょう。 その昔、僕らが出会えた僥倖に、乾杯! 遠方より来る友に、感謝! |