東一局五十二本場     1999/10/09
 
 
これは、故阿佐田哲也氏の短編小説のタイトルです。
腕に覚えのある若者が、「麻雀業者」という看板を掲げている男に試合を挑む話。
僕にも経験がありますが、運勢勃興期の若者にとっては、相手が誰であろうと負ける気がしない時代というものがあるのです。
果たして、この若者も勝ち続けます。アガってアガって、起家で何本も連荘して、いつまでたっても試合が進まない。
相手の3人は、誰もアガらないのです。
そして遂に、主人公は、いくらアガっても実質的には自分が一番不利なポジションにいることに気付くのです。
箱にあふれている点棒は、単なる途中経過に過ぎない。
気の遠くなるほど長い半荘は、負けなければ終わらないことを知るのです。
かくして、アガっても地獄。オリても地獄。
 
こういうのって、何かに似ているような気がします。
まず最初、子育てがそうじゃないかと思いましたよ。だって、あんなに激しく泣いて笑って、胃が痛くなるほど気を揉んで、最後の最後には、手元には何も残らないんです。もちろん、それでいいんだけど。
まあ、3世代で一緒に暮らしてる人たちもおられますが。
実は僕も学生時代に1回だけ、僕が親で、東一局から先に進まなかったことがあるんです。アガり続けて何本も積んで、僕がアガるか流れるか。
その時は、メンバーのひとりが途中で具合が悪くなって、真っ青な顔でひっくり返ったのでそのままノーゲーム。途中止めにすることに、何のためらいもありませんでした。(嘘ですよ。よりによって、何でこんな時に気分が悪くなるんだよ、と思ってました。はい)
ただ、そういう時というのは、なにか、非常に変な立場になってしまうんですよね。
友人が体調を崩してくれて、結果的には助かったんです。
 
話が横道(嫌味な自慢話!)にそれてしまいましたが、東一局五十二本場な状況は、子育てだけに限らないと思っています。
書けないことも多いけど、もがいた思い出を数えたら両手でも足りない。(ΘιΘ)
MOTOさんも、定年退職までのあと2年が長いといっておられましたよね。
本当に、いろんなところにあります。
それに、退職してゲームが終わるわけでもないし。
何回目かの半荘に区切りがつくだけ。
 
何が幸せかわからないといってしまえば、まさにそうでしょう。
勝ちたいと思うからこそ、五十二本場が地獄になるわけだし。
そうか、考えてみると、最後は負けて終わるのもいいですよね。
勝ち逃げは、しちゃあいけない。
 
 
                                 ムッシュ
 
 


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