悲しきカレーうどん    2004/04/04
 
 
 学生のころ、友人とふたりで繁華街に出かけたとき、貧乏な僕らにはありがたい食堂がありました。
 そこは、大学の二部の学生がバイトをしている店としても知られていて、高級な品物ばかりが並んでいるその繁華街で、唯一といってもいいくらい、庶民的なたたずまいというか、実は狭くて雑然としているのですが、それだけに変な気取りがなく、親しみやすいお店だったのです。
 そして、そこでの僕のお気に入りは、カレーうどんでした。普通の汁うどんに、雲のようにカレーのルーが浮かんでいました。
 僕は、まず、そーっと汁をすすり、かつおをベースにしたスープの確かさを味わいます。そして、少しずつうどんを食べ進めると、自然にカレーがスープと混ざり合っていき、その過程の味の変化を楽しむのが好きでした。
 最近のカレーうどんの主流は、スープでルーを練るタイプのようです。それはそれで捨てがたいものがあります。異議ありません。様々なバリエーションは、ある意味で文化でもあります。
 
 ところで、今日、妻と中部高原方面にお花見に出かけました。場所は、久米郡旭町、ダム湖上流の三休公園。岡山市から、豊かな水をたたえた清流に沿って、北上すること約1時間ほどのところです。20年前に仕事で取材に訪れて以来。そのときは、川の流れを鮮やかに彩る桜並木のことを、「春序曲」という企画記事にまとめました。
 周辺はすっかり様子が変わり、公園には登り窯や工房も出来ていたりしてちょっとした観光地です。桜並木も成長し、大きく立派になっていました。
 ひさしぶりだね。元気だったかい、懐かしい風たち…。
 
 それはいいんです。問題は、そのあと某「道の駅」にまわったときの昼食です。
 あまり、パッとしたメニューがなくて、僕は運良くというか、キムチうどんを注文しました。妻は、運悪くというか、はずみで「カレーうどん」です。そして、出てきたカレーうどんを見てビックリ仰天。
 パターンとしては、好ましいことに浮雲タイプです。ところが、どっこい。透明感のあるスープに浮かんでいるのは、どう見ても、レトルトパックのカレー。
 そういえば、僕も一度だけ経験がありましたよ。職場近くの、評判の讃岐うどん店ですよ。お昼にはみんな並んでいますよ。ある日、残業に備えての腹ごしらえに行きましたよ。もちろんカレーうどんですよ。そのとき、どう見てもレトルトカレーでしたね。
 
 そういうのは、もうやめようよ。
 可哀相だよ。
 
 
 

 
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