嘘つきの見分け方    2003/07/02
 
 
 若いころ、何かの宴席で、主賓から握手を求められたことがありました。
 僕はその席で一番の若輩でしたし、光栄に思いながらも気恥ずかしく、うつむき加減にそっと手を差し出しましたよ。
 
 後日、ある町長さんから、こんな話を聞きました。
 握手してみれば、その人の本心がわかると。
 力強く相手の手を握った時、じっとこちらの目を見て、グイッと握り返してくる人は信用できる。その逆で、うつむいて弱々しく手を出す場合は、心がないと。
 心外でした。しかし、勉強になりましたよ。そういう考え方の人もいるということです。詐欺師たちは多分、獲物の目を正面からまっすぐに見据えて、力強く握り返してしまうのでしょうね。そして、田舎の政治家たちは、その手にまんまんと引っかかるのでしょう。イチコロですよ。
 
 そんなプロの嘘つきとは別に、世の中にはアマチュアの嘘つきも少なくありません。
 彼らの多くは、失敗を繰り返すタイプです。ついミスをして、犯した失敗を取り繕うために、とっさに、その場しのぎの嘘をつくのです。そういう連中に共通の特徴は、機関銃のように喋ること。つい心ならずも嘘をついてしまったのなら、あとで嘘を本当にするような努力をすればいいと思います。それが可能なケースは、実社会の中には少なくありませんから。だけど、そんな気もないんですよね。
 ここまで書いて、ふと、鈴木某氏のことを思い出しましたよ。国会で、攻める時も守る時も、いつもマシンガントークを炸裂させていましたね。
 ごまかそうと必死になると、どうして人は多弁になるのでしょう。
 
  
 では、だまされないためにはどうしたらいいか。どうすれば嘘つきを見分けられるか。簡単にいえば、今まで書いた話の裏返しになります。
 ただ、注意しなければいけないのは、話に含まれる真実の部分にあまり着目しないこと。人を欺きたいときは、ほとんど本当のことばかりの中に、ほんのちょっとだけ、必要最小限の嘘を混ぜると効果的といわれていますから。
 ただまあ、後者のようなアマチュアの嘘つきのケースでは、普通は流れの中で見分けがつくものです。多弁だし、話の内容にどうしても矛盾がありますから。
 
 手に負えないのは、プロの嘘つきたちです。
 可愛い女の子に真っ正面から見つめられて、つぶらな瞳で訴えるように話をされたら、「またまた、嘘つくんじゃないよ」なんて思えますか。嘘つきは、残念ながら、いつも多弁とは決まっていません。
 それなのに、いまだに、握手の仕方で本心が見抜けると信じている政治家たちというのは、僕は少なくないと見ています。多分、ね。
 本当は、グイッと力を込めて握ってくる相手こそ要注意だと、そう思いますよ。
 しかし、嘘つき対策は、それだけでは不十分でしょう。こっちが相手を研究すれば、相手は、さらにまたその裏をかいてきます。
 裏の裏は表ですから……ん……???
 いっそもう、あきらめて、潔くだまされましょうか。
 
 
 

 
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