若いころ、何かの宴席で、主賓から握手を求められたことがありました。 僕はその席で一番の若輩でしたし、光栄に思いながらも気恥ずかしく、うつむき加減にそっと手を差し出しましたよ。 後日、ある町長さんから、こんな話を聞きました。 握手してみれば、その人の本心がわかると。 力強く相手の手を握った時、じっとこちらの目を見て、グイッと握り返してくる人は信用できる。その逆で、うつむいて弱々しく手を出す場合は、心がないと。 心外でした。しかし、勉強になりましたよ。そういう考え方の人もいるということです。詐欺師たちは多分、獲物の目を正面からまっすぐに見据えて、力強く握り返してしまうのでしょうね。そして、田舎の政治家たちは、その手にまんまんと引っかかるのでしょう。イチコロですよ。 そんなプロの嘘つきとは別に、世の中にはアマチュアの嘘つきも少なくありません。 彼らの多くは、失敗を繰り返すタイプです。ついミスをして、犯した失敗を取り繕うために、とっさに、その場しのぎの嘘をつくのです。そういう連中に共通の特徴は、機関銃のように喋ること。つい心ならずも嘘をついてしまったのなら、あとで嘘を本当にするような努力をすればいいと思います。それが可能なケースは、実社会の中には少なくありませんから。だけど、そんな気もないんですよね。 ここまで書いて、ふと、鈴木某氏のことを思い出しましたよ。国会で、攻める時も守る時も、いつもマシンガントークを炸裂させていましたね。 ごまかそうと必死になると、どうして人は多弁になるのでしょう。 では、だまされないためにはどうしたらいいか。どうすれば嘘つきを見分けられるか。簡単にいえば、今まで書いた話の裏返しになります。 ただ、注意しなければいけないのは、話に含まれる真実の部分にあまり着目しないこと。人を欺きたいときは、ほとんど本当のことばかりの中に、ほんのちょっとだけ、必要最小限の嘘を混ぜると効果的といわれていますから。 ただまあ、後者のようなアマチュアの嘘つきのケースでは、普通は流れの中で見分けがつくものです。多弁だし、話の内容にどうしても矛盾がありますから。 手に負えないのは、プロの嘘つきたちです。 可愛い女の子に真っ正面から見つめられて、つぶらな瞳で訴えるように話をされたら、「またまた、嘘つくんじゃないよ」なんて思えますか。嘘つきは、残念ながら、いつも多弁とは決まっていません。 それなのに、いまだに、握手の仕方で本心が見抜けると信じている政治家たちというのは、僕は少なくないと見ています。多分、ね。 本当は、グイッと力を込めて握ってくる相手こそ要注意だと、そう思いますよ。 しかし、嘘つき対策は、それだけでは不十分でしょう。こっちが相手を研究すれば、相手は、さらにまたその裏をかいてきます。 裏の裏は表ですから……ん……??? いっそもう、あきらめて、潔くだまされましょうか。 |