高田渡はふたひねりする    2001/05/02
 
 
高田渡って、何者なんだ。
初めてその名を聞いたのは、『高田渡と武蔵野タンポポ団』。
この「団」というのが、フォークの名前としては珍しくて、まるで少年探偵団の小林少年のように颯爽とした感じで、なんとなく一本取られたようで、くやしかった。
 
どうも、向こうの曲に日本語の歌詞を乗せて歌っているらしい。
何かの本に、そんな話を書いている人がいました。聴いてみると、ギター奏法が、ツーフィンガーだったりスリーフィンガーだったり、要するに向こうの弾き方なもんで、そんなことをいわれたのかなと思いました。その弾き方で、よくあるコード進行で曲を書けば、メロディーラインは似た感じがしても仕方ありませんから。
初期の頃の彼の印象は、『僕は君からとれるだけのものを とったら』にも書きましたが、
彼の詩集である『個人的理由』に象徴されるといっていいかもしれません。
 
     <友達>
 
  ボクは君から
  とれるだけのものを とったら
 
  冷酷かも知れんが
  君を すてるよ !
  いつまでも
  なれあいの感情の確かめ合いは
  したくないから
 
 
これです。
初めのうち僕は、高田渡は関東の西岡たかしじゃないかなと思っていた節があります。
大阪で、西岡たかしは、あとに続く若者たちの面倒をよく見て、岡林信康の初期のレコーディングなどにも参加しては、音楽的なレベルの低さを身を粉にしてカバーしてやっている感じがありました。
高田渡もそういう人なのかなと思っていたのです。
でも、彼は違いました。
彼は、飲兵衛です。
そこが、西岡たかしとは決定的に違います。
西岡氏は、コンサートの最中は、ヤカンに入れた水を飲んでいたものです。日本酒や、ビールは飲みませんでした。
 
さて、前置きが長くなりましたが、現在の高田渡は、どうか。
2001年5月2日、岡山県笠岡市カフェ・ド・萌に登場した高田渡氏は何を語ったか。
そのことをここに告げるのは僕の使命かもしれません。
いいとも、暴露しましょう。
以下は、彼の話です。
 
【カフェ・ド・萌について】
別に、毎年ここに来たくて来てるわけじゃないんです。
でも、なんだか年に1回来る。お墓参りみたいなものです。
 
【お酒について】
医者はストップをかけてるんじゃない。
死ぬ、といってる。
1年間お酒をやめたこともあるが、朝起きて飲むビールがうまいと、あ、今日も生きてるな、と思う。
貧乏神が、ある貧乏な家に住みついて、そのあまりの貧乏さに、このままじゃ自分が死ぬ、と逃げ出した。
わたしも、同じだと思う。(この部分、比喩の意味は不明)
 
【休憩明けに】
もしかすると、休む前に歌った歌を、もう1回歌うかもしれない。
 
【コマーシャルについて】
ご存じの方もおられるかと思いますが、キンチョー蚊取りマットのコマーシャルをやってます。
以前スープのコマーシャルに出たときは、段ボール箱いっぱいのスープを送ってきたことがありました。
そのときわたしがいったのは、「具が欲しい」。
今度は何を送ってくるんでしょう。まだ送ってきませんが。
死んだ蚊でも送ってくるのでしょうか。「佃煮にでもしてください」と。
ありうるかもしれない。(絶対ないと思うけど)
 
【フランス料理について】
ソースは具にかければいいのに。
(そういわれれば、ぐるりと周囲にまわしますが、具にはかけませんね)
 
【親について】
わたしは幼くして母を失い、父も18歳の時に失いました。
そんなわたしは、毎日ブラブラしていますが、親子の風景というのは、いいものだなと思います。
もし、いま父親が生きてたら、と思うと……96歳ですが……。
絞め殺してると思うんですよね。
 
【歌について】
南こうせつが、わたしの「生活の柄」を歌わせて欲しいといってきたことがあります。
その時、彼は、「せいかつのえ」を、というんですよ。馬鹿です。吉田拓郎は何も考えてないし、陽水は、初めのころのことですが、しかし、傘がない家なんかなかった。傘がない家など、ありませんよ。
(みんな、仲のいい友人だといってましたけど)
行き場がない歌ばかり歌っていますが、わたしは歌を作るとき、ふたひねりくらいするんです。
 
【「あきらめ節」を歌う前に】
誰にかわっても、自民党は自民党なんですけどね。
 
と、まあ、こんな感じでした。
歌は……相変わらずです。
ポツポツと、区切りながら歌うところは変わりません。
ただ、NHKテレビなどで歌ってた時の彼は、酔っぱらって、もうギターなどボロボロでしたが、今宵は意外なほどしっかりしてて、ステージの始まる1時間以上前からカウンターで飲んでいたわりには、スリーフィンガーピッキングも達者なものでした。
僕も最近刺激を受けて、ふたたびギターを抱え、爪など伸ばしてヤスリをかけ始めましたが、今夜のライブ会場のトイレに行ったとき、年齢のせいか、ジーンズのチャックに引っかけて、人差し指の爪を割ってしまいました。
不覚でした。
高田渡氏は、そんなことはないのでしょうか。
爪は、最近はホッチキスの針を外すだけで傷つくし、何となく、もろくなりました。
セメダインか何か接着剤を塗るか、若しくは何か張るかして、補強する必要があるかもしれません。
工夫しなくちゃ。
高田渡氏だって、ふたひねりくらいするわけだし。
   
 

 
前の話へ戻る 次の話へ進む
 
【夢酒庵】に戻る

【MONSIEURの気ままな部屋】に戻る